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100号記念メッセージ

■vol.121 (2002年11月13日発行)

【岡崎満義】「松井メジャー入り」で考えたこと
【松原 明】松井の挑戦
【杉山 茂】セの松井、パの野茂・イチローをおさえる?
【岡 邦行】ドラフト制度の舞台裏


【 松井MLB入りに想う 1 】
◇「松井メジャー入り」で考えたこと

(岡崎満義/ジャーナリスト)

巨人の松井秀喜選手が米大リーグへ行く、と聞いて、これは面白ことになるぞ、とまず思った。日本のプロ野球に乱世到来、戦国時代の幕開け。巨人中心の天動説崩壊…といった感じだ。

2年程前、作家の伊集院静さんから、「松井選手が大リーグ入りした時、マスコミとも接するのだから、ある程度の日米の文学を読んでおいた方がいい、と読書アドバイスをしてるんですよ」と聞いていたから、今回のニュースに驚くことはなかった。いよいよその日がやってきたのだ。

松井選手の活躍は誰もが認めているように、間違いないだろう。イチローと新庄の成績を見ると、彼らが日本で残した数字はほぼそのまま、大リーグで可能だ、ということが分かる。だから松井選手も打率3割、ホームラン35本、打点100はいけるのではないか。

松井選手が活躍できるか出来ないか、よりも、彼が抜けたあとの巨人、というより日本のプロ野球の方が心配であり、またどうなるかと興味津々である。今、長嶋茂雄さんが強化本部長になって、2004年のアテネ五輪にドリームチームを送り込み、金メダル獲得を!という体制ができつつあるようだが、その程度のことでは、日本プロ野球の危機は回避できないだろう。

FA制度、やがては世界ドラフト制度などによって、アメリカン・ドリームを夢見る選手がどんどん出てくるだろう。それを押しとどめる有効な手立ては、今のところない。放っておけば、日本のプロ野球は、完全にアメリカ大リーグのマイナーリーグ化してしまう。

昨年、この問題を何人かに取材したことがあるが、その流れを止めるいいアイディアは見つからなかった。その中でも、巨人の渡辺恒雄オーナーの「愛国心に訴える」という意見と、『菊とバット』の著者で知られる評論家ロバート・ホワイティングさんの「日本の上位球団の大リーグ入り」という意見が印象的だった。

渡辺オーナーの意見はさておいて、ホワイティングさんの意見は「たとえば、アメリカ大リーグの東、中、西地区に加えて、日本地区をつくる」というものだ。

資本のしっかりしている、そしてフランチャイズもしっかりしている巨人、阪神、西武、日ハム、中日あたりの5球団で日本地区をつくれば、東、中、西地区との交流試合のための移動時間の問題はあるにしても、現役大リーガーの生の試合が日本でもたくさん観られることになる。そして、選手の流出、流入がよりスムーズに、また公平なものになろう。

アレックス・ロドリゲスやボンズなどスーパースターの超高額年俸に、日本地区の球団は果たして耐えられるか、という問題はある。しかし、今の高額年俸はいささか常軌を逸している。どこまでも青天井というわけにはいくまい。どこかである常識の線がでるはずだ。

そして、大事なことは、それと並行して、日本、韓国、台湾、中国できればオーストラリア、ハワイまで含めて、パンパシフィック・アジアリーグを創設することだ。野球の拠点をアメリカとアジアに置く、その架け橋的な存在としての日本、という構図である。日本野球発展のための100年構想だ。

夢のような話だと一笑に付されそうだが、それくらいデッカイ夢を描いて進まなければ、日本野球の新たな発展はないだろう。

そのための最低の必要条件は、少年野球からプロ野球まで、さらに高齢者の生涯スポーツ的な野球にいたるまで、その全てにかかわる日本野球統一機構をつくることだろう。今のように、プロとアマ、社会人、大学、高校…とバラバラの組織では、100年構想などを出てくるはずがない。

日本の戦後50年は、アメリカの核の傘の下、文化の傘の下にあった。イチローや松井の大リーグ入り、そして、日本地区づくりは、一見、日本がアメリカ野球の傘に下に入るかに思える。

しかし、右の目でアメリカを見、左の目でアジアを見ることで、アメリカの野球の傘を、アメリカを越えて地球大の傘に広げることができないだろうか。そうあって欲しい、と思う。

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【 松井MLB入りに想う 2 】
◇松井の挑戦

(松原 明/東京中日スポーツ)

「命を賭けても」と、重大決心で日本を代表するスラッガー、松井が大リーグへ挑戦する。

あまり評価されていなかったイチローに比べ、今回は前評判が高いだけに、その挑戦は幾多の試練が待ちかまえている、と予想される。

まだ、進路が決まらないが、もし、巨人の意向通り、ヤンキースに入る、と前提して言えば、メディアの洗礼が大変だ。松井、と同じ、実績を買われてヤンキースへFAでアスレチックスから移籍した、ジエイソン・ジオンビー一塁手は、最終的には打率.314、41本塁打、122打点の立派な成績を残したが、シーズン当初は三振の連続。冷笑を浴びせられ、2割やっとの打率に「何をしている。帰れ」と、ブーイングの連日。5月にやっとエンジンが掛かるまで苦難の毎日だつた。

「打席で冷静になれなかった。大変な毎日だった」と、ニューヨークの試練を話している。メデイアは情け容赦なく批判を浴びせ、それに、どう耐えるかの、精神的なタフさが求められる。

過去、こういう、二ユーヨークの怖さに負けて実力も出せず、消えていったスターも少なくない。「命を賭けて」と誓った以上、松井は歯を食いしばっても頑張るだろう。彼の技術なら全く心配はないが、正否は、どんな攻撃にも耐えるタフさがあるか、どうかだ。

イチローも様々の攻撃に耐えて切り開いてきた。が、メデイアに心を開かない取材拒否が問題になったことも確か。現地のメデイアに好かれるように、フランクな態度で接して欲しい。彼らを敵にするのではなく、松井の味方に付けるよう、フランクにリラックスしてやれば、どこでも門は開かれるのではないか。

どういう風にアメリカへ乗り込むか、が楽しみだ。

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【 松井MLB入りに想う 3 】
◇セの松井、パの野茂・
イチローをおさえる?
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

松井秀喜が、最初の1ヶ月で5本ものオーバーフェンスをマークしたなら、日本のプロ野球情報はポッカリと穴が空くだろう。

テレビは、時差の関係で、国内の中継と重なり合うことはないが、夜の時間帯にリピート(録画による再放送)でも仕掛けられれば、確実に影響が出る。

野茂英雄の時から、米大リーグ(MLB)中継は、明らかに日本の野球とは異なるベースボールの魅力を運んできていた。佐々木主浩とイチロー、新庄剛志で、ムードはいっそう盛り上がり、そして、松井だ。

彼らの打席、彼らのマウンドだけではなく、MLBそのものの醍醐味がこれまで以上に身近となれば、セ・パ両リーグの"空洞危機"は、はっきりする。

スポーツ紙のフロントページ、テレビのスポーツニュースは、松井を中心に、日本人メジャーリーガーに"占拠"される。

今でも、夕刻から夜のテレビニュースは、ナイトゲームの途中経過より、「新庄は1安打と2つの内野ゴロ…」を先に伝えているのだ。

中継は、どの球団に所属しようが、松井が"主役"になるだろう。

あれほど、MLB番組に貢献してきた野茂もイチローも、露出減は避けられまい。とんだところでの「セ高パ低」だ。

シアトル・マリナーズが、来シーズンの開幕戦を日本で、と考えるのも、肯ける。

ところで、松井のサヨナラ舞台とバリー・ボンズの豪打に沸く日米野球の裏では「オリンピック問題」が関係者の間であわただしく"問答"されている。

楽観は許されない、という見方が濃いが、ここへ来て、国際オリンピック委員会(IOC)周辺から「時間をかけて検討すべき課題」として、11月28、29日メキシコシティで開かれる総会で、一気に結論を出すのを見送る動きがのぞきはじめた。

私は、9月半ばに、日本オリンピック委員会(JOC)の首脳の1人から「ベースボールなど削減といわれる競技は、そうなっても2012年以降…」と聞いていた。

だが、国際ベースボール連盟(IBAF)会長が、オリンピックでの競技日程を、現行の12日間から5日間に短縮する案を示したという外電(=11月8日)は、IBAFの緊張を示すものだ。

IOC筋に強力な働きかけをしている一番手はベースボール用具業界、というのも"定説"だし、日本の有力メーカーの1つは「ベースボール存続、ゴルフ新加入といかぬものか」と欲張りな夢を描いているともいう。

松井の落ちつき先ともども、いつになく気になる話題が重なるシーズン・オフだ―。

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◇ドラフト制度の舞台裏
(岡 邦行/ルポライター)

今年のプロ野球ドラフト会議は11月20日に行われる。"松坂世代"といわれる大学ドラフト候補有力選手たちが、次々とプロ入りを表明している。

早稲田の和田毅と九州共立大の新垣渚の両エースはダイエー、慶應の長田秀一郎と法政の後藤武敏は西武、亜細亜の木佐貫洋と東海大の久保裕也は巨人…といった具合だ。

が、どのスポーツ紙を見ても"肝心な部分"にはなぜか触れていない。契約金についてだ。

現在、日本プロ野球界は、各球団代表で構成されているプロ野球実行委員会で、「契約金の上限は1億円まで」とし、「出来高払いは契約金の半額まで」としている。つまり、どんな有望選手でも入団1年目には契約金+出来高払い=1億5000万円以内しか掌中にすることはできないはずだ。

しかし、現実は違う。

例えば、金満球団の巨人の場合。数年前はA選手を獲得する際、10億円以上の資金を動かしたといわれる。もちろん巨人だけではない。こんな噂も飛んだ。B選手獲得の場合だ。まずは、広島が獲得のため2億5000万円を用意したところ、阪神はその倍の5億円、さらに巨人はそれに上積みして7億5000万円…。結果は当然のごとく。推して知るべきだろう。

以上の話は噂の域を脱しないが、私は事実であると信じるし、密着して取材をするスポーツ紙記者の耳に入っている。が、契約金1億円、出来高払い5000万円以上の金額を紙面に記すことはない。

ここで私の個人的な意見をいっておくが、ドラフト制を根本的に見直さない限り、私は契約金の上限など決める方がおかしいと思っている。

多少乱暴な意見と思われても構わない。獲得したいのなら5億円でも10億円でもいい。資金力にものをいわせて獲得すればいい。それがプロの世界だと。そう思っている。よって、オリックスのように「プロに入れてやる」といった態度で契約金ナシで選手獲得するチームは、とんでんもない球団だと考えている。第一に夢がない。

で、本題に入る。今年は"松坂世代"と称されているように有望選手に恵まれている。当然、不景気の世間に反して札束が舞っている。

そんな中で私が注目している選手は、日大のスラッガーである村田修一だ。縁あって、私は、日大入学当時から現在まで4年間、彼のプレーを見てきた。この4年間に村田は、東都大学リーグ史上2位タイの通算20本塁打をマーク。3年生の秋のリーグ戦ではダイエーの井口資仁(青山学院大)に並ぶシーズン最多本塁打8本を記録する一方、4年間で通算103安打とし、歴代6位タイの活躍を見せた。もちろん、村田獲得のため多くのプロ球団が群がった。巨人も破格の条件を武器に獲得に乗り出してきた。

しかし、村田は巨人入りに首肯することはなかった。村田は、その理由を私に強い目で説明した。

「自分に対する巨人の姿勢は、最後まで『指名するから入団してくれ』でした。これでは納得できません。しかも、初めは自分と早稲田の和田を獲りにいく、みたいな感じで新聞に発表していた。ところが、和田がダイエーに内定すると、東海大の久保、亜細亜の木佐貫の名前を出してきた。久保は自分と同じ福岡生まれ。負けちゃいられないし、首都大学リーグ戦なら自分が投げても抑えられると思っていますから。それに、巨人は、最後は東北高の高井雄平、高校生の名前まで出してきた。じゃあ、自分は何番目の選手なんだ?そう考えるのは当然です。あくまでも自分は1番にこだわりたい。子供の頃から自分は、お山の大将でいたいと思っていました。そんな自分を理解してくれたのが横浜です。だから、自分は横浜に自由獲得枠の1番で入団することに決めたんです。」

横浜入団を決める際、日大野球部監督の鈴木博識は、村田に、「お金にこだわることも決して悪いことではないぞ」といった。しかし、村田は、鈴木にも私にもはっきりといった。

「監督さん、それに、岡さん。自分はお金で動くようなヤワな男ではないです。お金は入団後に活躍して稼ぎます。だいたい自分は巨人が嫌いです」

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