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第12回Vリーグ女子 パイオニア・レッドウイングス×シーガルズ 栗原恵


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第12回
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vol.270-1(2005年 9月28日発行)
岡崎 満義/ジャーナリスト

“マサカリ投法”村田兆治と少年たち

杉山 茂/スポーツプロデューサー
   テレビ編成重視で観客遠のく?
  〜イングランド・プレミアリーグ〜

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“マサカリ投法”村田兆治と少年たち
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 9月22日夜、NHKTV人間ドキュメンタリー「剛速球 島を行く−村田兆治55歳の夏」を見た。テレビ・ドキュメントとしては、オーソドックスな作り方で、ごく平凡な出来だったが、村田兆治という男の存在感は、画面から溢れこぼれていた。

 平成3年、村田さんは新潟県の沖に浮かぶ粟島へ行った。人口500人の小さな漁業の村だった。小中学生15人が全員参加する野球教室である。そのとき村田さんは41歳、前年に現役引退したばかりだった。少年たちの前で、村田さんはピッチングで全力投球してみせた。時速140キロを越すスピードボールに、少年たちは目を丸くし、大きな拍手が鳴りやまなかった。少年たちの素朴な感激ぶりに、逆に村田さんは感動したという。それがきっかけで、全国の島めぐりをするようになった。以来、これまでに40以上の島をめぐっている。少年たちは1人1打席と決めて、現役時代と変わらないマサカリ投法の村田投手と対決する。決して手を抜かない村田投手の速球やフォークボールに、歯をくいしばってくらいついていくボックスの中の少年たちの緊迫感が、ひしひしと伝わってきて、まことに気持ちのいい映像であった。時には若い先生もバットを握り、空振りしていた。

 少年たちと真剣勝負をするために、村田さんは毎日のようにスポーツジムに通って、1時間のハードトレーニングを欠かさない。とても55歳とは思えない筋力と、体の柔かさを今も維持している。

 元阪神の村山実投手の“ザトペック投法”をほうふつとさせる村田さんの“マサカリ投法”は、土や草や太陽の匂いのするダイナミックなものだった。それに向かう少年たちの目が輝いている。

 村田投手がすごいのは、昭和58年にヒジを手術し、2年間の孤独なリハビリに耐えて、昭和60年、36歳で17勝をあげて、みごとに復活したことだ。力投型の投手の肩や肘にメスが入ったら、復活は望み薄というのがそれまでの常識だったが、村田投手はまさに不死鳥のようによみがえったのである。通算215勝をあげて、平成2年、23年間の現役生活にピリオドを打った。

 そして今、環境のととのわない離島に足を運び、140キロを超すスピードボールで、少年たちと真剣勝負をする、という生き方が何ともすばらしい。

 ここ数年、名球界入りした選手を中心に、プロ野球のOBたちが、シニアリーグをつくって、プレーしている。山なりのボールを投げ、ヨタヨタと走り、空振りして尻もちをつく。ご愛嬌といえばそれまでだが、かつての名選手たちの老いたユニフォーム姿を、鈍重なプレーぶりを、私は見たくない。私たちの記憶の中には、名選手たちのすばらしいプレー、シーンが深く刻まれている。ダイヤモンドのなかに、まさに宝石のように輝いていた選手たちは、目をつむれば、すぐに甦ってくる。それだけで十分だ。どうか、記憶の中の肖像権を、ご当人によって侵害しないでもらいたい!

 村田さんが、現役時代にかわらぬ140キロを越すスピードボールを投げるために、毎日トレーニングを欠かさないところが、何にもましてすばらしい。体重管理もしっかりできて、おなかもでていない。体型は現役時代と変わらない。

 村田投手は相手が少年だからといって、いささかも手加減を加えることなく、真っ向からあのなつかしいマサカリ投法で、グイグイ速球を投げ込んでいく。そこがいい。みごとなホンモノ主義!

 「いつか、離島甲子園を実現したい」と村田さんはいう。その言やよし、である。村田兆治さんに拍手、拍手、である。


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