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vol.273-2(2005年10月21日発行)
佐藤 次郎/スポーツライター

マリーンズが教えている

滝口 隆司/毎日新聞記者
  〜ロッテ優勝に見るプロ野球と地域性〜
葉山 洋/マーケティング・コンサルタント
  〜千葉ロッテマリーンズが面白い〜
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マリーンズが教えている
佐藤 次郎/スポーツライター)

 千葉ロッテマリーンズのパ・リーグ優勝には新鮮な味わいがあった。31年ぶりというだけではない。このチームの成功には、プロ野球再興へ向けて大いに参考となりそうな中身が詰まっているようだ。

 まずチームづくりがある。今季のチームに全国区のスターはいない。渡辺俊介が独特のフォームで注目されているが、それもさほどではない。だが、マリーンズの野球は魅力たっぷりだった。いうなればチームそのものがスターなのである。

 将来性をしっかりと見極めて、一から育て上げた選手が多い。それほど金はかけていないのだ。だが、その戦いにはとにかくスキがない。それぞれの持ち味を常に出し切れるピッチャーたち。スピードと粘りを身上とし、自分が何をやるべきかをちゃんと心得ている攻撃陣。さらに、ファインプレーを当たり前のものとする固い守り。一瞬も目が離せないと見る側に思わせる戦いぶりなのである。

 スターばかりを集めて、結局は戦力も魅力も失ってしまった某球団などと比べれば、その違いは明らかだ。強くするには金だけが決め手ではない。また、チームそのもの、あるいはプレーそのものに魅力があれば、名前だけのスターなどいなくとも、見る者を大いに引きつける。今季のマリーンズは、そんなチームをつくったのである。

 ファンとの一体感や地域密着の方向も目立っていた。「ファンは26番目の選手」を表す背番号26のユニフォームはよく知られている。それに象徴されているように、常にファンの存在を強く意識した球団運営が行われてきているのだ。

 そしてファンの側も、熱烈かつスマートな応援でそれにこたえている。この一体感は、球団を活性化させるうえできわめて貴重なものと言っていいだろう。それはまた、地元との一体感をもはぐくんでいるようだ。

 もちろん、すべてはまだ始まったばかりなのだろう。安定した戦いを長く続けるためにはさらなるレベルアップが欠かせないし、ファンサービスや地域密着の努力を安定した球団経営につなげていくのは、そう簡単なことではない。課題はけっして少なくない。

 とはいえ、確かな方向が示されたのは間違いないことなのだ。

 どのチームも、やろうと思えばこうしたことができるはずなのである。個性的なチームづくりによって魅力を増し、一方ではファンサービスや地域との連携で新たな人気を掘り起こしていけばいいのだ。マリーンズと同じである必要はない。それぞれに独自の個性、独自の方式を考えればいい。大事なのは、いますぐにやれることが必ずあるという教訓なのだ。

 オーナー企業の安定も大きな要素ではあるが、とりあえずはどこでも可能な努力によって成功をつかめるのを、今季のマリーンズは教えてくれている。となれば、他の球団もこれに学ばない手はない。

 昨年来の球界激動はまだ続いている。しばらく安定した状態は望めそうもない。だが、球界全体の構造改革もさることながら、各チームでいますぐできる地道な努力も、プロ野球人気の復活に大いに役立つはずである。

 選手を丁寧に育てて、バランスのとれたスキのないチームをつくっていく。ファンの存在を大事に考え、一体となって盛り上げていく。地元とのつながりを大切にする――。どれもこれも当たり前のことばかりだ。

 なのに、これまではちっとも実行に移されてこなかった。それでは人気を失うのも無理はない。金はあまりかけずとも、やれることさえきちんとやれば必ずプラスがあるのを、球界はあらためて学ぶべきだ。


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