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vol.258-2(2005年 7月 8日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

野村監督、古稀からの野球人生



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野村監督、古稀からの野球人生
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 社会人野球、シダックスの野村克也監督の「古稀を祝う会」は盛大だった。スポーツ界、政財界、芸能界から約1500人が集まり、会場は立錐の余地もないほどになった。パーティーの冒頭、発起人の1人という中曽根康弘元首相がこんな話をした。

 「70歳といっても、今や老人の仲間ではない。野球では一塁ベースに立ったに過ぎないところでしょう。80歳で二塁、90歳で三塁、100歳で1点だ。まだまだ、おおいに働いていただきたい。混迷した日本を引っ張っていく1人となってもらいたい」

 約2時間の宴が終わり、沙知代夫人と並んでの記者会見が始まった。「68歳や69歳では何の抵抗もなかったんだが、70歳は意識しますねえ。私が若い時、70歳といえばおじいさんという印象でしたから」と話す野村監督に「では、これからの夢は?」という質問が出た。ここで言葉に力が入った。

 「夢というのは特にないんですが、やはり野球界全体の組織作り、今はバラバラでしょう。みんな、いがみあっている。これを誰かが立て直さないといかん。大学生との練習試合で私はベンチに入れないんですよ。プロとアマの断絶というのは私の現役時代から続いているが、こんなことアメリカで言ったら信じられないと笑われますよ。このままでは野球界に発展はない。現状維持ではなく、どんどん変えていかないと。青少年のためにも組織づくりは急務なんですよ」

 シダックスと大学との練習試合で、野村監督はCMやテレビ出演していることを理由に「芸能人」とみなされ、これが日本学生野球憲章に抵触するとしてベンチに入れなかったことがある。

 日本野球機構、日本野球連盟、全日本アマチュア野球連盟、日本学生野球協会、全日本大学野球連盟、日本高等学校野球連盟……。それぞれに歴史があり、既得権益もある。他競技のようにピラミッド型の組織が形成されているわけではない。全日本野球会議という会合でプロアマの役員が集まる機会はあるが、野球界の組織はつながりが薄く、日本野球全体の将来を考える場がないに等しい。その現状を野村監督は「誰かが立て直さないと」と強調した。

 プロ球界への復帰待望論も根強い。サッチーこと沙知代夫人が「この人の最期は、カツノリ(楽天)がサヨナラホームラン打って、その時にベンチでばたっと倒れるのよ」と言うと、報道陣からはさっそくプロ球界復帰の意思を尋ねる質問が飛んだ。野村監督は「夢は夢や。夢はかなわないものだよ」と受け流したが、古稀を迎えた今、新たな生き方を考えているのではないか。

 脳こうそくを患った長嶋茂雄・巨人元監督が東京ドームに元気な姿を見せた。「彼は野球界の象徴。監督時代、彼はエネルギー源だった。だから、私には大事な人なんですよ」と野村監督。パーティーの各テーブルには小さな月見草が飾られていた。1年4カ月ぶりに戻ってきた太陽の影で、月見草もまた、野球人生の二塁ベースに向かって歩み出す。


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