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2005年FISA世界ボート選手権大会 軽量級エイト 日本チーム
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vol.267-1(2005年 9月 7日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部

NOMOクの優勝にみるクラブスポーツ


杉山 茂/スポーツプロデューサー
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岡崎 満義/ジャーナリスト
  〜もう一度、高校野球の暴力問題〜
佐藤 次郎/スポーツライター
  〜高校球界は危機感を持て〜
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NOMOクの優勝にみるクラブスポーツ
滝口 隆司/毎日新聞運動部)

 クラブ野球の全日本選手権がインボイスSEIBUドームで開かれた。日本野球連盟に加盟しているクラブチームは現在249。企業チームの減少に反比例して増加の一途にある。そんな世界を初めて取材してみたが、従来のイメージとは異なるクラブ野球像が見えてきたのは興味深い発見だった。

 クラブチーム所属の選手たちは、あくまで楽しむことを優先させた愛好者だと思っていた。「WIEN'94」という東京のチームは大会プログラムにこう自己紹介している。「スポンサーなし、地域の応援なし、篤志家や企業の応援もなし〜中略〜練習場なし、練習のための練習もなし。ボールに触るのは日曜日のみ。仕事優先。住まいも東京、神奈川、埼玉、千葉とバラバラチームです」

 これが典型的なクラブ野球の姿だったはずだ。野球が好きでたまらない。だから、スポンサーもいらないし、地域の応援もいらない。身銭を切って自分の楽しみや喜びのためだけにプレーをする―。

 もう一つは企業チームがクラブ化したパターンだ。静岡県浜松市を本拠地とするケイ・スポーツベースボールクラブは、休部となった河合楽器の選手12人を母体に2002年3月に結成された。このチームには元河合楽器の選手だけでなく、他チームで戦力外通告を受けた選手たちも集まってきている。

 「これで6チーム目です」と話したのは、35歳になる左腕、平井孝治という投手。神奈川・相武台高校を出て、全府中→ヤオハン→河上薬品→一光→ヤマハ発動機を経てケイ・スポーツクラブに入った。「大きな実績も残せず、なんか消化不良でここまで来たんです。やり足らなくて。渡り鳥ですよ」。こんな選手が汗を流せるのも、クラブという場があってこそだろう。

 だが、大会を制したのは、こうしたチームではなかった。初出場で初優勝を果たしたのは、今夏の都市対抗にも出場したNOMOベースボールクラブだ。個々のしっかりとした打撃技術、内外野の連係プレーなどを見ていると、他チームよりもはるかによく鍛えられていることが分かる。それもそのはず、NOMOクラブの練習は旧新日鉄堺のグラウンドで、毎夜7時から深夜12時ごろまで続くのだという。

 「なぜそんな時間まで練習をするのか? それを支えているのは何か」と聞くと、清水信英監督はこう言った。

 「ウチに来ているのは、野球がやりたくてもできなかった選手ですよ。みんな志を高く持っている。夜の12時であろうが、1時であろうが、選手がやるといえばこちらも妥協できませんよ」

 主将の染谷健一外野手は28歳。堺市内の製菓会社で包装の仕事をしながら野球を続けている。「女房もいるし、確かに体もきつい。でも、都市対抗で勝つチームを作りたいし、みんなプロになりたいという目標を持っているんです」。

 クラブからプロを目指すという考えが、少しずつ広まりつつある。NOMOクラブと準々決勝で対戦し、1−2の接戦で敗れた欽ちゃん球団「茨城ゴールデンゴールズ」にもそんな若い選手がごろごろいる。こうしてトップレベルを担う下の層として、クラブチームが企業チームに代わって選手育成の重要な役割を果たす日はそう遠くはない。そんな時代を考えると、クラブの競技環境を真剣に考えていかなければならないだろう。「楽しみ重視」の自主活動だけでクラブスポーツは収まりきらなくなってきたのだ。


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