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vol.277-2(2005年11月18日発行)
滝口 隆司/毎日新聞記者

「スペイン人」になったロナウド


杉山 茂/スポーツプロデューサー
  〜オリンピックへの道・"世界"への道〜
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「スペイン人」になったロナウド
滝口 隆司/毎日新聞記者)

 国際オリンピック委員会(IOC)が選手の国籍変更を問題に取り上げようとしているようだ。今月10日、スイス・ローザンヌの五輪研究センターに世界のスポーツ関係者約140人が集まってこの問題を議論した。しかし、何らかの方針を導き出せたわけではなく、結論は「ケース・バイ・ケースで対処することが基本」だったという。

 五輪憲章における「競技者の国籍」条項を改めて要約しておきたい。

 まず二重国籍を持つ選手は、どちらの国を代表してもいいが、五輪や国際大会で一方の国を代表した後、もう一つの国を代表することはできない。

 ただし、国籍を変更した選手は、元の国を代表して出場した最後の大会から3年以上が経過すれば新しい国を代表できる。さらに関係するIF(国際競技連盟)とNOC(国内オリンピック委員会)の同意があれば、IOC理事会がこの期間を短縮、解消することも可能となる。

 96年アトランタ五輪のソフトボールで、日本国籍を取得した中国出身の宇津木麗華が中国オリンピック委員会の同意を得られず、五輪への道を閉ざされた例が記憶に残る。昨年のアテネ五輪では、ジャマイカからスロベニアに国籍を変えた陸上女子の名スプリンター、マーリーン・オッティが、44歳にして7度目の五輪出場を果たしている。

 宇津木もオッティも指導者を慕って他の国へ移住したケースである。国籍変更の理由は多種多様であり、政治的亡命もあれば、五輪出場のチャンスがある国を狙ってというケースもある。インドネシアから独立した東ティモールのように、国家の分裂により新たなNOCができる例もある。国際陸連は、アフリカの有力選手が報酬を目的にカタールやバーレーンに次々と国籍変更する事態を憂慮し、今夏の総会で国籍のルールを厳格化する決定を下している。

 そして今、大きく動き出しているのがEU(欧州連合)各国のクラブに所属するアスリートたちだ。

 今月10日、サッカーのブラジル代表で、スペインのレアル・マドリードに所属するロナウドが、スペイン国籍を取得したというニュースが飛び込んできた。同じくレアルのロベルト・カルロスも8月にスペイン国籍を得たという。ともにブラジルとの二重国籍だ。

 EU内の国籍を持つ人は域内のどの国でも働く権利があり、スポーツ選手の移籍市場も自由化されている。

 ロナウドはこれでEU内の選手となり、どの国のクラブでもEU外選手枠にとらわれずに移籍できる。スペイン・リーグの枠は3人。レアルとしても、ロナウドに代わって新たにEU外の選手を獲得できる。今後、サッカーをはじめ、欧州各国のあらゆるスポーツでこうした国籍変更の動きが出てくるはずだ。

 IOCもますます加速する「国境なき時代」の流れを見越しているのだろう。五輪憲章は「オリンピック競技大会は、個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と明確に謳う。かといって、国籍を完全に無視した五輪をすぐに実施できるものでもない。憲章の大原則を維持しながら、世界の実情に即したルール作りが急がれる。


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