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vol.281-2(2005年12月16日発行)
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者

10代が引っ張る日本スポーツ?


葉山 洋/マーケティング・コンサルタント
 〜期待感を膨らませるドロー〜

大坪正則/帝京大学経済学部教授
 〜フロリダ・マーリンズの本拠地移転問題〜

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10代が引っ張る日本スポーツ?
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者)

 フィギュアスケートのグランプリ・ファイナルが代々木・第一体育館で始まった。出場6人中、日本選手が3人を占める女子は15歳の浅田真央(グランプリ東海クラブ)、17歳の安藤美姫(愛知・中京大中京高)、20歳の中野友加里(早大)の顔ぶれ。これまでは高校生、安藤の活躍に舌を巻いたものだが、今年は年齢制限でトリノ五輪の出場資格さえない浅田の登場だ。今季のGPシリーズポイントで、浅田は日本人トップに立っている。

 よく見渡せば、他のスポーツでも同じ現象が次々と起きている。11日に行われた福岡国際女子柔道では、谷亮子(トヨタ自動車)の欠場した女子48`級で、16歳の中村美里(東京・渋谷教育学園渋谷高)が初優勝を飾った。ヤワラちゃんの15歳という最年少優勝には及ばなかったが、3年後の北京五輪では谷の強力なライバルとして注目されるのは間違いないだろう。

 卓球の中国スーパーリーグに参戦している17歳の福原愛が、15日に中国・広州で行われたワールドカップで銅メダルを獲得したというニュースも飛び込んできた。もはや福原の「若さ」は話題にも上らないほどだ。同じく女子ゴルフでも、20歳の宮里藍、横峯さくらに続いて、諸見里しのぶ、宮里美香といったティーンエイジャーが台頭してきている。

 低年齢化は女子に顕著のようだが、男子でも同様の現象が見える。カナダで開かれたスノーボードのW杯では17歳の国母和宏(北海道・登別大谷高)が優勝し、今季すでに2勝目。昨年のことになるが、プロ野球では阪神に15歳の辻本賢人が入団したり、サッカー・Jリーグの東京ヴェルディで森本貴幸が15歳にして史上最年少出場を果たしている。今年、プロ野球が支配下選手枠以外で選手を獲得できる「育成ドラフト」をスタートさせたが、将来は中学生さえ対象になる時代がやってくるかも知れない。

 では、なぜ日本スポーツが低年齢化してきたのか。トップクラスにのし上がった若い選手を見ると、大半が学校の部活動に競技活動の基盤を置いていない、という共通項が見えてくる。柔道の中村にしても、中学から神奈川・相模原市にある吉田道場に入門。寮生活をしながら柔道漬けの毎日を送っていたそうだ。野球の辻本はアメリカ帰り、サッカーの森本はヴェルディのクラブ育ちである。

 逆に部活動のシステムは低年齢の才能を開花させにくい環境にあるのではないか、という仮説も提起できる。専門的指導者の不足や練習環境の問題、加えて先輩、後輩の上下関係なども阻害要因に挙げられるだろう。

 小学校高学年の指導が最も大切だ、と聞いたことがある。この時期の吸収力は他の世代とは比べものにならない。新しい技術を次々と覚え、それをスポンジのように吸い込んでいく。中学生からはその応用であり、同時に体力強化も進めていく段階だ。

 こうした成長期の指導者が非常に重要なのは疑いがないことだ。「若きスター」の出現は大歓迎ではある。しかし、実力を長く維持するには、土台となる「基礎」がいる。低年齢化に刺激されて促成栽培ばかりを求めてはならない。


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