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vol.291-2(2006年 3月 3日発行)
市川 一夫/スポーツライター

アスリートのセカンド・キャリア支援がビジネス化する事情
〜競技団体などが取り組み進める〜

滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
  〜ナショナルチーム中心の強化でいいのか〜
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アスリートのセカンド・キャリア支援がビジネス化する事情
〜競技団体などが取り組み進める〜

(市川 一夫/スポーツライター)

 スポーツのビッグイヤー、皮切りの冬季五輪(トリノ)が幕を閉じた。
史上最多の編成で臨んだ日本選手団は事前の加熱した報道とは裏腹に、金メダル1個に終わり、多くのスポーツファンの期待に応えるには至らなかった。

 変わり身の早いメディアは、早速不振の原因を論評し、特に冬季スポーツ特有の練習環境の変化や未整備、選手の生活環境が企業スポーツ支援の打ち切りなどで不安定であるなどと報道している。

 しかしこれらの理由は90年代から引きずっており、特に今回に限ったわけでは無いのだ。
認識しながら今まで対策を実行していないJOC、競技団体の責任であり、それらを鋭く指摘し早期着手を強く主張しなかったメディアの責任も問われて然るべきであろう。

 今回あげられた理由のなかで気になった点は、選手交代が進まずベテランと言えば聞こえが良いが、世界のトップを狙うには年齢的にやや無理がある選手たちが居たことだ。

 さて、このような情勢のもとで、スポーツ選手の引退後の生活を支援する目的でセカンド・キャリアサポート・プログラムが様々な形で進行中である。

 最初に着手したのは若年プレーヤーを多く抱えるJリーグで、リクルート出身の人材が実務を取り仕切り具体的な活動が進んでいる。
特に評価される点は、選手活動期間中のシーズンオフ、さまざまな業種、業態で職業経験を積ませることや、引退後選手を受け入れてくれる企業の開拓、さらには若年で引退する選手が多いので、勉学の機会を提供する大学を登録し、希望する選手に対し情報提供や進路指導を行っており、その成果が注目されている。

 次いでJOCはいかにもと思わせる方法で人材派遣業者をパートナーに選び、協賛金獲得メリットまで追求しており、他には(財)プロスポーツ協会が加盟団体を網羅する形で計画を立ち上げている。

 いずれのプログラムも人材サービス業が何らかの形で参画しており、きめ細かなアイディア、計画が続々と登場する気配だ。

 企業や学校が選手活動支援を行うことは、我が国固有の方式として長い間継続されてきたが、いずれの場合も企業の宣伝、広報活動が主たる目的であって、見返りを期待しない社会貢献策としての支援でないことは明らかであろう。
従って広報・宣伝効果が落ちれば打ち切られる宿命を背負っているといっても過言ではない。
このような不安定な状況のなかで、四年に一度のチャンスにメダルを獲得することは至難の業である。
ましてや結果次第では明日からの生活保障さえ失うことも有り得るのだ。

 スポーツ選手の引退後の生活を予め想定し、そのためのキャリアデザインを指導、斡旋しようという施策は、競技を始めようとする若年者、保護者、関係者にとって疎かに出来ない重要な取り組みであろう。

 更には人材サービス業に丸投げするのではなく、競技団体が常に主体性を持ち、引退後の長い社会生活に適応可能な指導が行われるよう関係者は見守っていく義務がある。

 施設整備や強化資金を獲得するといった単純な方策から脱皮し、選手が競技に専念できる体制づくり、さらにそれらの先を見据えて引退後の生活基盤を整えることが実現して初めてメダルへの希望を表明すべきと考える。

 トリノからの映像や報道を視ながら選手が背負う現実に思いを巡らせ、将来を気遣うにはいられない心境である。


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