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vol.307-4(2006年 6月29日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「日韓のDFの壁」

 サッカー、ドイツW杯で敗れたジーコ監督は、退任会見を開いた。約1時間半の間、なぜ敗れたか、を独演し、体力差を今後どう解消すべきか、を話した。

この中で、聞き逃せないのは「宮本はジャンプでふくらはぎを痛めた。いつもと違うところを痛めた。もっと鍛えないと、予防をどうするか、が必要だ」という発言だ。

 ここに、日本の敗因がある。

 体力差、身長差は、大会前から分かっていたこと。急に相手国が大きくなったのではない。その対策がなかった、ことの証言がこの1項だ。

 メキシコは大半が170センチ台。日本とあまり変わらない体格だが、大男相手に立派に競り勝ち、アルゼンチンとも延長の激闘で一歩も引かない健闘を見せた。メキシコは、体格差を敗因にしてはいないのである。

 「日本のDFは印象に残るものがなかった」と、観戦したアーセナルのベンゲル監督は言う。イタリア代表のDFカンナバロは宮本とほぼ同じ身長175センチだが、抜群のジャンプ力で大型FWに競り勝ち、巧みな間合いで仕事をさせない、見事なDFぶりだった。これは、激しいセリエAでもまれ、多くの国際試合を通じて身に付けたものだ。

 日本、韓国とも、欧州へ多くのスターを送り込めるようになったが、DFは両国ともに1人もプレーしていない。欧州の厳しい試合をだれ1人として経験していないのだ。

 「ふくらはぎを痛めた」と訴えたのは、いかに日本のJリーグ、国際親善試合が甘く、激しい競り合いをしていないか、の現れではないか。DF全員が欧州未経験だから、最後にやられた。欧州で鍛えられているオーストラリア、クロアチアのDFに跳ね返されたのは仕方がない。

 悪いことに、今回の敗退で、「日本に行っても何のメリットもない」と、強豪国の来日はさらに減るに違いない。

 しかも、後続のユース年代も全く国際大会の経験がない。韓国は自国のKリーグを犠牲にしても、大会前に、アメリカ、イングランドへ長期遠征に出かけ、欧州対策を練ってきたが、それでも一歩及ばず、1次リーグで涙を呑んだ。

 欧州と常時手合わせできるアフリカ、南米に比べ、常に国際試合ができない東アジアのハンディは余りにも大きい。

 欧州、南米のW杯で東アジアが勝てる日は、来ないのではあるまいか。

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