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第20回オリンピック冬季競技大会(2006トリノオリンピック) 女子 女子シングルフリー 決勝 サーシャ コーエン(USA) 2位

(C)photo kishimoto

第20回
オリンピック冬季競技大会
(2006トリノオリンピック)
女子 女子シングルフリー 決勝
サーシャ コーエン(USA) 2位

 

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(C)photo kishimoto
vol.290-2(2006年 2月24日発行)
大坪 正則/帝京大学経済学部教授

選手の禁止薬物使用

滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
  〜そろそろ総括の時期だ〜
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選手の禁止薬物使用
(大坪 正則/帝京大学経済学部教授)

 荒川静香選手がアジア出身の選手として初めて女子フィギュアで金メダルを獲得した。快挙である。JOCの中には、この金メダルに胸を撫で下ろしている役員が少なからず居たに相違ない。もしも女子フィギュアがメダルを逸しておれば、1976年インスブルック以来のメダル無しの可能性が濃厚だったからである。トリノ冬季オリンピックは彼女によって救われた。

 オリンピックに出場する以上、選手は「勝ちたい」と思うのは当然。だが、現実には、国別のメダル獲得を見る限り、ロシアを含むヨーロッパ大陸と北米大陸の国以外では、韓国・中国・オーストラリア、それに、日本しかメダルを取っていない。冬季オリンピックは依然としてヨーロッパが主流であって、南アメリカ・アフリカ・アジアに冬のスポーツが普及するまでに時間がかかることを示唆している。

 冬のスポーツは施設や用具に金がかかるので、経済力の充実と国からの支援が不可欠である。その意味から言えば、GDP世界第2位の我国がメダル1個では情けない。スポーツは裾野の広い経済基盤がある。「金がかかる」ことは経済の活性化に繋がることでもある。北海道や東北地方を中心にした施設の充実が急務と考える。
 
 メダル獲得競争の陰に、選手による禁止薬物使用が浮上した。イタリア検察当局が2度に亘ってオーストリア選手団の家宅捜査を行った。抜き打ち検査によって証拠品が押収された模様であり、IOCからオーストリアオリンピック委員会に対する処分は不可避と見られている。選手による禁止薬物使用は、オリンピックだけではなく、プロスポーツでも深刻な問題である。プロであるから、勝てば選手に大金が転がり込む。「勝ちたい」との誘惑に駆り立てられることがあるのだろう。プロ選手の宿命かもしれない。オリンピックがプロ(商業)化した今、不正を行っても勝ちたい選手(または国)を撲滅するのは至難なことになろうとしている。検査が厳しくなれば、それに応じて、選手やその組織は検査の網を巧妙にくぐり抜けようとし、イタチゴッコが続くと思われる。

 アメリカのプロリーグは数十年に亘って禁止薬物使用と戦っている。若い時から金持ちの仲間入りができるプロ選手には誘惑も多い。過酷な戦いを長期に亘って強いられることも相まって、禁止薬物に手を染める選手が後を絶たない。

 1970年代、NBA選手の4人に3人がドラッグに汚染された。これに経営者と選手会が危機感を持ち、サラリーキャップ導入の一因になったとも言われている。MLBも、1980年代、コミッショナーが不正薬物使用に取り組んだが、個々の事件を追う対処方法を取ったために、包括的な解決策を採用するに至らなかった。1998年のマーク・マクガイアとサミー・ソーサのホームラン競争がステロイドの結果だと疑われては、べーブ・ルースとロジャー・マリスを超えた年間ホームラン記録更新も色が褪せてしまう。

 2004年から2005年にかけてアメリカ下院で行われた公聴会は、MLB選手の薬物汚染を白日の下に晒した。実際に手を染めていたのは一握りの選手だったが、皆無ではなかったことが公になったのだ。

 オリンピック選手におけるメダル、プロ選手における記録達成、共に「お金」に直結する。名誉と汚名が表裏一体の禁止薬物使用。選手個人だけではなく、組織としての対応を強化しなければならない。


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