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第20回オリンピック冬季競技大会(2006トリノ・オリンピック)アルペンスキー 男子回転 皆川賢太郎


(C)photo kishimoto

第20回オリンピック
冬季競技大会
(2006トリノ・オリンピック)
アルペンスキー 男子回転
皆川賢太郎

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(C)photo kishimoto
vol.291-1(2006年 3月 1日発行)
杉山 茂/スポーツプロデューサー

「スタンディング・オベーション」



岡崎 満義/ジャーナリスト
  〜荒川静香選手が発見した「無用の用]〜
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「スタンディング・オベーション」
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 トリノ冬季オリンピックが初めてではないのだが、フィギュアスケートなどでテレビ中継の解説者やアナウンサーが、しきりと「スタンディング・オベーション」(Standing Ovation)という表現で、会場内の熱狂ぶりを伝えていた。

 音楽会の演奏、演劇のカーテンコール、スポーツ(競技者)の演技に、観客が立ち上がって絶讃の拍手を贈るその姿を指すのだが、日本のスポーツシーンで描かれる「満場総立ち」は一方的な応援の延長上にある。ニュアンスが異なる。

 外国のそれは、総ての競技者の、総てのプレーのなかから、観客が自らの感覚で、惜しみない讃辞を、拍手に乗せて投げかけるのだ。自然発生のよさが、そこにある。立ち上がるまでもないと感じた観客の姿も珍しくない。

 それだけに、文字どおり「総立ち」の喝采を浴びるのは、競技者冥利につきよう。

 フィギュアスケートは、「スタンディング・オベーション」がもっとも似合うスポーツとも言える。

 かつての女王・伊藤みどりさんは、滑り終わって観客のその姿を見、歓声と拍手の音を聞くために演技しているようなものだ、とさえ語ったことがある。観客のレベルの高さを物語りもする。

 「スタンディング・オベーション」の起源は定かでない。たどりつけないほど昔にあるのは間違いなさそうだ。音楽、演劇、舞踊と並んで、スポーツでも同じ風景が描かれているようなのは嬉しい。

 メジャーリーグ・ベースボールでは、ピッチャーが策戦上であれ、ノックアウトであれ試合途中で退場し、ダッグアウトへ向かう場面では、必ずといってよいほど「スタンディング・オベーション」が起こる。

 いつの頃からか、誰からともなく引き継がれる伝統的なマナーなのだ。

 荒川静香選手の“金の舞”は、演技が終わるか終わらぬうちから、この儀式が場内で始まった。観客の肥えた鑑賞眼が、最高位を予言したのである。

 彼女の演技は素晴らしかったが、オリンピックの熱気のなかから、こうしたスポーツ文化の素敵さも、是非「日本のもの」にしたい。

 オリンピックという極上のステージには、いつも「スポーツの味わい」があふれている。

 「スタンディング・オベーション」は、その結晶であろう―。


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