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vol.375-1(2007年10月23日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「ヤンキース・トーリ監督の終幕」

 ヤンキースは、ジョー・トーリ監督を退陣させ、後継者選びに入った。
1956年から、12年連続でプレーオフに出場。4回のワールドシリーズ優勝を飾り、東地区1位10回。2位2回。歴史に残る実績を挙げた名将を退陣に追い込んだヤンキース首脳のやり方には、多くの批判が出ている。

 4番アレックス・ロドリゲス三塁手の代理人で、このオフ、移籍の主役になりそうなスティーブ・ボロス氏はこういう。「トーリの偉大な実績を無視して、ボーナス契約で釣るとは言葉もない。彼のプライドを考えない仕打ちだ」
会談わずか20分。ジョージ・スタインブレナー・オーナーの自宅があるフロリダ州タンパへ、ニューヨークから呼ばれたトーリ監督は、まだ来季の指揮に希望を持っていた。しかし、基本年俸は、250万j(約2億8800万円)もの大減俸。保証は1年契約。「ボーナスを積み重ねれば、今季の年俸を上回る。来季の年俸500万j(約5億7500万円)でも、ルー・ピネラ(カブス監督)の350万j(約4億250万円)を超すメジャー最高額。ワールドシリーズに出場すれば、2009年も800万j(約9億2000万円)は保証される」と、ランディ・レバイン球団社長は「これで何の不足があるか」という会見だった。

 これに先立ち、タンパで2日間行われた首脳会議で「監督の去就問題は、何も出なかった」とされているが、トーリ受諾、拒否の場合を想定したシナリオを練り上げていたに違いない。

 トーリ拒否の直後、直ちに「後任監督候補4人の面接を始める」と表明したのは、その現れではないだろうか。

 退陣する監督の会見は、どの球団もやらないが、ニューヨークの自宅にすぐ戻ったトーリは、翌日、自宅近くのホテルに、自らニューヨークのメディアを集め、会見を開いたことからもその無念さが分かる。

 トーリのヤンキース1173勝利は、1931年から15年間指揮した1460勝利のジョー・マッカーシー監督に次ぐ歴代2位だが、戦前と現代とでは、まるでメディアの存在が違うことを思えば、毎日の試練の嵐をくぐり抜けたトーリの実績は素晴らしいものだ。トーリ就任の1995年オフ。「トーリって誰?」とまで言われていた。監督の年俸は50万jの最低年俸。その低い評価を乗り越えて築いた12年間。

 愚弄するような条件提示などせず、「長年、ご苦労さん」の一言でサヨナラだったら、トーリも救われただろう。それでも、ハンク副社長は「あれは侮辱ではない。正当な評価」と、さらに反論している。

 ヤンキースは、ここ4年間、明らかな老化現象が続き、公式戦でエネルギーがなくなって、プレーオフでは、別のチームか、と思えるほどに落ち込んでしまう。

 今季も、公式戦で6勝0敗と圧倒していたインディアンズに、1勝しただけで地区シリーズ敗退したのも、その老化を証明している。チームは、FA大金選手を追うのを止め、ファームの若手育成、抜擢に、路線変更へ動き出した。

 後任の新監督の前途は厳しい。「優勝こそ、最大目標」と宣言している首脳陣の期待に応える成績を挙げるのは、至難のワザだ。ヤンキースの新時代はどうなるだろうか?故障が完治しない松井外野手の前途が厳しいのは言うまでもない。

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