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vol.376-1(2007年10月30日発行)
岡崎 満義 /ジャーナリスト
岡島秀樹投手にニックネームを!

 ボストン・レッドソックスのワールドシリーズ制覇に大いに貢献した岡島秀樹投手に、何かいいニックネームをつけたいと、いろいろ考えてみたがいいものを思いつかない。球を投げる瞬間、打者から目を切って、右下地面を見る独特のフォームに、どうネーミングしようか。野茂英雄投手のトルネード投法に匹敵するネーミングはないものか。

 首振り投法、最敬礼投法・・・うまくない。向こう見ず投法なら、岡島投手の威勢のよさが少しは表現できるか。でも、品がない。それにこれにはノーコン的なニュアンスがあるのが難だ。誰かいいニックネームをつけてほしい。

 そんなことを考えさせるほど、今シーズンの岡島投手の活躍は光った。ベケット、シリング、松坂と抑えのパペルボンをつなぐ中継ぎエースとして、チーム最多の66試合に登板し、まさに獅子奮迅の働きを見せた。巨人、日ハムでは特別に目立った存在ではなかった。こんないい投手だったのかと、私はびっくりした。鳴り物入りで海を渡った松坂大輔投手にくらべて、殆ど騒がれることのない移籍だった。それが、15勝の松坂に劣らない活躍ぶりだ。

 何が岡島投手をこんなにも変えたのか。ひょうひょうとして、どこかとぼけた感じをまとった岡島には、アメリカのカラッと乾いた空気が合ったのか。たしかに、球種も日本時代より1つ2つふえたようだが、それよりも、監督以下チームメイトの信頼の厚さが、大きかったような気がする。チームが快進撃をつづけて熱気がたかまり、高温高圧のベンチの中で、違和感はとけてしまったのだろう。初登板でいきなりホームランの洗礼を浴びながら、フランコナ監督は使いつづけた。次第に調子を上げ、防御率も長く0点台をつづけた。投手の誇り、自尊心がどれほど大事か、ということである。

 ワールドシリーズはレッドソックスがロッキーズに4連勝して、あっけなく終ったが、第3戦、第4戦の岡島投手のピッチングが何ともいえず興味深かった。第3戦はホリデーに3ランを打たれて、1点差に迫られたが、あとはピシャリ。第4戦でもアトキンズに2ランを左翼席に叩き込まれたが、これまた1点差を守り、あと2人をキチンと抑えた。テレビ中継の解説者2人が、しきりに「ペナントレース、ワールドシリーズを通じて、陰のMVPは岡島」と話す舌の根も乾かないうちに、3ランを打たれてしまう面白さ。しかもそのあとをこともなげに2人を打ち取ってしまう楽しさ。ホームランを打たれても逆転勝ち越しを許さないところが、中継ぎの面目躍如たるものに見えた。

 投手なら先発であれ中継ぎであれ、抑えであれ、零封しようと思うだろう。しかし、打たれながらも勝ちにつなげるのも、投手の力であり、才能というものだ。打たれたために結果的に試合が面白くなり、もつれた試合になって、なおかつ勝つのがプロの投手だ。岡島投手の打たれ方、抑え方を見ながら、野球とはこんなに面白いものかとあらためて思った。先発完投至上主義から、複数の投手で役割分担して試合を作っていく時代になった。多様な人生を認めよう、という21世紀社会の姿を、野球が先取りして見せてくれている、といえないだろうか。中継ぎ投手は先発と抑えの谷間の存在ではない。中継ぎという、先発、抑えと同価値の存在である。そのことを岡島投手は教えてくれたように思う。

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