スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.390-1(2008年2月26日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「北京五輪の壁は厚い」

 女子サッカー、日本代表なでしこは、東アジア大会で全勝優勝。日本女子史上初の王座に着いた。大橋監督が昨年のW杯後に退任、コーチだった佐々木則夫氏が監督に就任。新たなチームを結成して臨んだ成果が出たことは、素直に喜びたい。しかし、これで、一気に「五輪初メダルだ」と騒いでいるが、そう簡単に、世界の壁を越えられるだろうか。

 北京大会の女子サッカーは、前回アテネの参加10か国から2か国増加がIOCで認められ、初めて12か国になった。6大陸の代表の中で、今の日本が勝てるチャンスがある国は、南米代表・アルゼンチン(昨年の上海W杯で1−0の勝利)と、オセアニア代表ぐらいしかない。他の国は、みなフィジカル面が日本より格段に強く、それぞれ、抜群の技量を持つ大型ストライカーを持つているのが共通した特徴だ。

 上海大会優勝のドイツ、2位・ブラジル(南米予選でアルゼンチンに負けたため、4月19日にアフリカ2位代表とプレーオフの結果次第)3位・アメリカ、4位・ノルウェーは、すべて、日本を上回る運動量と、競り合っても負けないフィジカル面の強さがある4強。このどこかを崩さない限り、メダルは望めない。

 佐々木新監督は、長年、U19代表監督を務め、若い世代からの底上げに力を注いできた。上海大会代表はベテランが中心を占め、世界レベルの試合では、どうしても後半、運動量が落ちてしまう。今回はママさん選手の宮本を外し、DF池田、MF加藤(ともに結婚)をベンチに置き、FW・大谷も呼ばなかった。「攻守にアクションを起こせるサッカー」実現には、若手への思い切った切り替えが急務だったからだ。

 この固定化しかけたメンバーに、刺激を与えて活性化する狙いが実った大会だったことは評価したい。MVPに選ばれた澤をこれまでのトップ下から、守備ラインの中盤に下げた起用も、チームの新たな道を示したものだった。

 小柄な日本人の良さを最大限に発揮できれば、決勝トーナメントへの夢は不可能ではない。前回のアテネ大会は、スウェーデンに1次リーグで勝つ金星はあったが、セットプレー以外では得点できず、決勝トーナメントでアメリカのパワーの前に屈した。

 4月20日、北京で五輪本大会の組み合わせが決まる。上海大会の4強が必ず同じ組に入るのは確実だから、これからの海外遠征で大型チームと対戦し、さらに今のチームを伸ばす努力を続ければ前進できる。なでしこ・イレブンが、自チームに戻って、安心して気を緩めないことを祈る。

筆者プロフィール
松原氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件