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vol.391-1(2008年3月4日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「飛躍するアリゾナ・キャンプ」

 メジャー・リーグのオープン戦が始まった。それぞれの土地の特産にちなんで、フロリダ州は「グレープフルーツリーグ」アリゾナ州は「カクタス(さぼてん)リーグ」と呼ばれており、ファンに開幕前の新陣容を知らせる、大事な1ヶ月間になっている。

 近年、アリゾナ州は巨額の開発投資を重ね、相次いでフロリダ州のチーム誘致に成功、現在のフロリダ18球団、アリゾナ12球団の勢力分布図は、一気に逆転する勢いだ。ともに、避寒地として有名だが、この時期は両州とも、メジャー・リーグのキャンプで、観光客を集めるドル箱の1ヶ月なのである。

 来年は、ドジャースが64年間も使ったフロリダ東海岸のベロビーチ・キャンプに別れを告げ、新設されるグレンデール市の総合スポーツコンプレックスへ移り、インディアンスも、その隣に新設されるグッドイヤー市へ移転する。さらに、複数球団も、アリゾナ移転を計画しており、アリゾナが優位に立つのは時間の問題になってきた。

 現在、両リーグの西地区9球団で、フロリダ・キャンプを続けているのは、ドジャースだけで、ニューヨーク・ブルックリンにあった時代は、東海岸のベロビーチでも良かったが、ロサンゼルス移転以降は、時差3時間もある大陸横断は「ファンが観戦に来るのは大変」という、地理的事情が背景にある。アリゾナが一気にキャンプ地として注目されだしたのは、スポーツ施設を建設出来る広大な土地があり、全部平坦な土地で移動にも時間がかからない便利さがある。しかも、年間の晴天率は80%にもなり、よほどの異常気象がない限り、いつも青空で練習に打ち込める。

 州、郡、市が一帯になり、新たに開発したのは、1994年にオープンしたピオリア市(マリナーズ、パドレス)2003年からスタートしたサプライズ市(ロイヤルズ、レンジャーズ)の2都市。サプライズ市は4830万j(約51億円)ピオリア市は3200万j(約34億円)を投資。1万人以上のメイン球場ばかりか、2チームで12もの練習グラウンドも併設。クラブハウスも完備している。来年誘致する2都市もグッドイヤー市は7500万j(約79億円)グレンデール市は8000万j(約84億円)もの大金で施設を建設する。

 フロリダ州で1万人以上収容の球場を持つのは、タンパのヤンキース1球団しかない。施設を拡張したくても、東西海岸地区は土地がなく、建設資金も捻出できず、引き止められない有様だ。

 アリゾナの各キャンプ間は最大でも1時間しかかからない。市バスでキャンプ地巡りも可能なのが大きい。1年間、野球を楽しめるように、マイナー・リーグ、教育リーグも開催。雇用も増え、文化施設、劇場、学校も併設。ホテル、大型スーパーも進出。アリゾナ州全体の経済効果は3億j(約320億円)にもなる、と言われている。アリゾナなら、日本からも近い。サンフランシスコから2時間、ロサンゼルスからは1時間で、中心都市のフェニックスへ着く。空港からダウンタウンへの直通電車、ライト・レイルも2009年には開通する。

 日本では、沖縄、宮崎にプロ野球キャンプが集中しているが、アリゾナ州ほど大がかりな総合施設に比べられるキャンプ地はない。日米の設備格差は比較できないほど大きい。選手もファンもアメリカへあこがれるのは自然の流れだろうか。

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