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vol.407-1(2008年7月1日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「サッカーの動員策」

 日本サッカー協会は、ワールドカップ3次予選最終日、対バーレーン戦のハーフタイムに五輪代表・反町監督の「みなさん、サッカーを応援してください。神戸、国立で2試合、壮行試合が行われます。多くのサポーターの方のご来場をお待ちしています」という、いわばCMのような呼びかけビデオを流した。

 この日、6月22日の埼玉スタジアムは、朝からの降りしきる雨。その悪条件の中で、今季ベストの5万1180人のサポーターが集まった。

 「効果があるか、どうか、手応えは分からない。しかし、サポーターが来てくれないことには、試合も盛り上がらないし、あの応援の底力が我々を支えてくれている。協会から要請があったのは3日前。ビデオで収録したときは、ついに、ここまでやるか、とも思ったが、応援が少ないピンチは、身にしみて感じている」と、反町監督は、初めての試みに協力した。

 監督をCMに駆り出さないと、宣伝できないほど、いま、競技場にファンは来ない。オシム監督時代から、動員は低迷続き。五輪代表の試合はさらに観客動員はさらに不振を極めている。

 オシム時代の最多動員は、2007年3月24日、初めてMF・中村俊輔が合流した日(横浜・日産スタジアム)の6万400人。岡田監督も、W杯予選のオマーン戦(2008年6月2日、横浜日産スタジアム)の4万6764人がベスト。5万を超えたのは、バーレーン戦が初めてだった。

 五輪代表に至っては、北京出場を決めた2007年11月21日(対サウジアラビア)の4万2913人以外は、2万人を超えたのはわずか4試合しかない。今年度はアンゴラ戦(2008年3月27日)が1万2718人。カメルーン戦(同6月12日)も1万5560人(いずれも国立競技場)の不入り続き。前売りで売れず、当日券販売で懸命の努力も実らない。

 今や、黙っていてもファンが来る時代ではなくなったのを実証する、この2年間だった。日本サッカー協会・田嶋幸三専務理事は、危機を乗り越えるため、チケットの料金設定、販売の見直し、PRの方法、開催場所の選定、国際親善試合のマッチ・メイクの問題、の改善に乗り出した。

 「我々も危機感は感じている。協会の総力を挙げて取り組まないと、解決できない」と、打ち明けた。その第1歩が反町監督のビデオ呼びかけだった。
協会内部の部長を大幅に移動させ、沈滞した組織の活性化に乗り出したのも、そのひとつだ。

 国際試合は平均4万人を動員したい計画は大幅に崩れ、今季の日本サッカー協会収支は赤字決算は免れない。欧米から来日する国は「クラブが拒否するので主力は連れてこれなかった」「若手の育成に来た」という弁解ばかりで、満足なメンバーがそろったことがない。ファンが見たい選手が常にやって来ない。これが度重なれば、テレビでも見ればいい、と思う人が増えるのは仕方がない流れだ。W杯予選のさなか、欧州も南米も遠い日本へ来たがらない、というマッチメークの改善は容易ではないのだ。

 日本サッカー界全体の危機に、ようやく立ち上がった協会。今後の打つ手が見物である。

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