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vol.410-3(2008年7月24日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
地域と2人3脚の湘南ベルマーレ

 サッカーJリーグの各クラブは、Jリーグの提唱する100年構想に沿って、そのホームタウンで様々な地域スポーツの活動を繰り広げている。

 J2の湘南ベルマーレは、他のどのクラブより早く、NPO法人をスタートさせ、ビーチ・バレー、女子ソフトボール、フットサルなどを展開しながら、地元の小学校へ訪問授業を進め、サッカーの普及発展の努力を地道に続けている。

 7月20日、平塚市商工会議所ホールに、ホームタウンの7市、3町の小学生年代(4種)の指導者を呼び、初めて「フットボール・アカデミー・カンファレンス」を開いた。集まった指導者は監督、コーチ、リーダーら約100人。ほとんどの人は初対面だったが、それぞれの地域が抱えている悩みを打ち明け「こんなに指導者の考えは違うのか」と、考えさせられる集会だった。

 少年世代には、いかにサッカーに興味を持たせ、楽しくボールを扱わせるか、が大事だが、「時間が取れない」「父兄と融合できない。期待と希望が食い違う」と、時間が経つにつれ、多くの意見がでた。

 北京五輪女子代表選手、FW永里優季(日テレ)を育て、長男・源気がベルマーレのトップチームに所属する、林SCの指導者、父、正彦さんはこう言う。

 「私は15年間、子供を指導してきましたが、まず、子供たちが、何をしたいのか、どこを目指すのか、どのレベルでやりたい夢があるのか、よく聞きます。じゃ、こうしたらいいよ、と、相談してやらせます。これは、納得ずくで、コツコツやるしかないのです。そして、基本を身につけるのが第1。この世代に必要なのは、基本のスキルです。ボールをきちんと蹴る、受ける、これを体に染みこませるのが大切です。ボールを取る、奪い、ゴールを狙う、この3つができれば育ってくる。ウチの3人(妹の亜紗乃さんも日テレベレーザ所属)はみんな負けず嫌いな性格でした。トランプしていても勝負を付ける。こういう気持ちも伸びるためには必要ではないでしょうか」

 「戦え、同じレベルの子には負けるか」「テクニックがあっても闘争心が大事だ」と力説するコーチもいる。

 Jリーグの山下則之技術委員長はアルゼンチンから昨年末に招いた、トカリ氏の言葉を紹介した。「タレントは見つける。エリートは育てる」「勝とうではなく、この年代は育てよう」

 サッカー協会もJリーグも空白になっていた、この世代の発掘育成へ乗りだし、急速に普及は進んでいる。

 いま、ユース世代で最も多くの人材を育て、ユースから代表へ選手を送り込んでいるのは、ガンバ大阪がNO・1だ。

 育成・普及部長の上野山信行氏は「子供のころに、いかに基本を身につけさせるかが、その子の将来を左右します。ウチから代表にまでなった選手は、すべて、ボールを正確にあつかうトラップの技術が身に付いています。この基本をできるかどうかが大事なのです」と、話している。

 指導者が少年少女たちに、この基本の大切さを教えられるか、楽しくやらせられるか、ベルマーレは、今後もこの交流会を続けてゆき、忍耐と時間が掛かる、この普及活動の成果を待つ、という。これら草の根指導者が育つのを期待している。

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