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vol.391-2(2008年3月7日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞大阪本社運動部記者
都市型独立リーグは本当に独立できるか

 四国・九州アイランドリーグ、北信越のBCリーグに続いて関西でも野球の独立リーグが発足することになった。スタートは来年の4月。先に出来た2リーグはプロのない地方での発足だったが、今回はプロに加え、アマチュア野球も盛んな関西である。数々の難問が待ち構えているに違いない。

 リーグを運営するのは、インターネットメディア事業を展開する「ステラ」(大阪市)という企業で、介護事業や人材派遣なども行っている。同社の中村明社長が、四国で独立リーグを立ち上げた元西武の石毛宏典さんと知り合い、スポーツ事業としてリーグ設立を思いついたそうだ。

 「関西独立リーグは今までの発想と違った『都市型の独立リーグ』です。フランチャイズは関西の中心、京都、大阪、兵庫と隣接する和歌山、奈良、滋賀となります。従ってファンとなる人口数、スポンサーとなる有力企業数が圧倒的に多く、『都市型の独立リーグ』のビジネスモデルとして十分な資質とポテンシャルを備えています」

 これはプレスリリースにある設立趣旨の一節だ。他の地域よりも野球熱が高く、地方より有力企業も多いだろう。しかし、事はそう簡単ではない。

 関西ではプロ2球団ではなく、アマ野球との関係が難しいだろう。平日であっても大学野球(関西学生、関西六大学、近畿、阪神、京滋の5リーグ)で各地の球場は使用されている。夏場は高校野球の予選でどの球場も占められ、社会人野球も都市対抗や日本選手権の予選がある。都市圏は野球人口が多い分、場所に「空き」がない。現実的には昼間にアマ野球を行った球場で、ナイター開催ということになるのかも知れない。

 来春の開幕時には4チーム体制となるが、今のところ設立されているのは、紀州レンジャーズという和歌山のチーム。残る3チームは大阪、神戸、播磨という顔ぶれで、播磨は今春の設立が予定されている。3年目からは8チームにする構想もあるという。

 運営体制は以下のようなものだ。@シーズンは4月〜10月の月、金、土、日、祝祭日で各チーム72試合(ホーム・アンド・アウェー方式)A使用球場は各自治体・行政の公共施設及び民間企業の野球場B所属選手は1チーム20人でプロ契約。10月末から11月初旬にトライアウトを実施C選手の報酬は月額20万円プラス出来高払いで、契約期間は3月1日から11月30日までの9カ月間−−といった内容である。1試合平均観客数は2000人を目指しているという。

 選手の月額報酬や目標の観客動員数をみると、四国ILの2倍近い。野球人口の多さから見れば、選手は集まるに違いない。だが、平均2000人の観客を集めるには新しい形でのファン層開拓が絶対不可欠だ。

 そのために何ができるか。このリーグも「地域密着」を掲げている。だが、もっといえば、地元の野球界にどれだけ密着できるかだ。アマ球界との関係だけでなく、底辺層の野球界にどれだけ入り込んでいけるか。指導者不足に悩むチームが多い中、試合のない平日を利用して、少年野球や中学野球に貢献できるような活動に取り組んでほしいものだ。単発的な野球教室はイベントのようなものであって、普及や指導にはやはり継続性が求められる。よくグラウンドに来てくれる「近くのお兄さん」がプレーしている試合なら、子供たちやその親も応援に行ってあげようという気になるだろう。欽ちゃん球団のような興行を目指すのなら話は違うが、地道な発展には時間がかかる。スタート当初の目標ハードルはもう少し下げた方がいい。

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