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vol.456-1(2009年7月15日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
ヤンキースの気配り

 7月1日に渡米し、ニューヨーク、ボルチモア、ワシントンを訪ねた。
今回の目的のひとつは、新装オープンしたヤンキー・スタジアムがどう変わったか、を探求することだった。旧ヤンキー・スタジアムは「ルースの建てた家」と言われ、ヤンキースの黄金時代を築いてきた伝統ある野球場だった。道路ひとつを隔てて新設されたヤンキー・スタジアムは、ニューヨーク市の支援を受け、総工費約16億ドル(約1600億円)の巨費を投じた最新の設備を誇る専用野球場である。

 豪華スィーツを多数設け、チケットの値段は、とても庶民の手に届かないほどの高額にセットしたため、不況の中批判は多く「経済の見通しを誤った」と、値段を下げ途中のセールスも始めて、何とかファンをつなぎ留めている。

 私は取材申請をせず、チケットを購入して(オンライン)ニューヨーク入りした。席は左翼上にある「アウデイ・ヤンキース・クラブ」。ちょうどセールスの途中で、通常値段より50ドル引きだったので申し込んだ。感心したのは、そのサービスぶりである。確約書はEメールで届いたが、丁寧に窓口でどう受け取るかを説明しており、初めて訪ねた野球場でもすぐに窓口に行くことができた。感心したのは、試合日の3日前に「買って頂いてありがとうございます。当日はお待ちしております」という、案内メールが着いたことだった。

 日本のプロ野球、サッカー(Jリーグ)も、チケット・ぴあなどの専門機関を通じて販売しているが、クラブが感謝メールを購入者へ送る、とは聞いたことがない。さらに、場内、場外には、「メイ・アイ・ヘルプユー」と書かれた円形の札を掲げた職員が巡回している。困った人を見付けると、すぐに「お手伝いしましょう」と、案内してくれるのである。私もチケットを手にしてから、この職員がゲートまで案内してくれた。

 ヤンキースは職員(スタッフ)全員に7箇条の職員基本姿勢を伝え、開幕から実行している。レジェンド、と言われるこの方針の一番大事なのは、「ゲストに満足していただくのは最大の目標である」という項目だ。チーム(スタッフ)は一丸でやろう、全員でファンを大事にしよう、各自のパートで全力を尽くせ、と常に教育しているという。これぞプロのサービスではあるまいか。こういう姿勢なら「満足した。また来ようか」と、ファンは自然にリピートしたい気持ちになってくる。

 かつては「チケットを売ってやる」という態度がなくはなかった。それが、初心に返り、サービス第1に徹底する、とチームの方針を定めたのは素晴らしい。新球場は、これまでのヤンキー・スタジアムより4500席少ない。だから、昨年までのように、年間400万人動員更新は不可能だろう。

 しかし、記録以上の収穫を彼らは得たはずだ。目下、前半戦を終え、アメリカン・リーグの動員トップにいるヤンキース。あの親切さに接したら、自然にチームを応援したくなる。

 チケットを初めて買って得た心地良さは、今回の渡米で忘れられない。クラブ席の施設の良さ、心地良さは申し分ないほど素晴らしかった。約100ドル(1万円)の高値だったが、十分満足している。

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