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vol.472-1(2009年12月21日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「地方との格差はなくなった大学サッカー」

 19日から関東地区で開幕した「第58回全日本大学サッカー選手権大会」(インカレ)で目立つのは地方校の健闘である。夏の大学選手権を初優勝した福岡大学、準々決勝へ進んだ鹿屋体育大学、天皇杯でJリーグクラブを連破した明治大学と延長戦まで互角だった仙台大学、11年ぶりに関西リーグ優勝の関西大学とPK戦で敗れた広島修道大学、大会2連覇を目指す中央大学に粘った中京大学、いずれも関東、関西が独占したきた王座を脅かすに十分な内容だった。今や、地方、都会の格差はなくなったと言ってよい。

 印象的だったのは北海道教育大学岩見沢校の頑張りだった。1回戦の相手は関東大学リーグ2連覇の王者、流経済大学。後半は相手を無得点に封じ、1−2で敗れたものの、シュート数では流通経済大学を上回り、試合内容も遜色なかった。岩見沢は北海道でも有名な豪雪地帯。東京へ出る前は積雪40センチで、サッカーの練習どころではない。上京して明治大学のグラウンドを借り、やっと大会へこぎ着けた。陣頭指揮をする越山賢一監督は、同校で指揮して27年目。ついに悲願の初出場を手にしたが、本当は、北海道では第1回の代表になり、41年ぶりの本大会出場になるという歴史は忘れられている。部員は200人を超す関東の各大学に比べると3分の1の60人しかいない。越山監督は「君たちは将来、教員や指導者になり、北海道各地で後進を育ててサッカーの普及に努力して欲しい」と、選手に指導資格ライセンスを受験させ、4年生は全員C級ライセンスを持っている。監督自身、A級ライセンスを持ち、さらに1級審判インストラクターの指導員でもある。だから、審判とどうやるべきか、を選手に教えている人物である。「ここで本場の貴重な経験を得れば、きっとその体験が生きてくる。大会から何を学ぶかを体で知ってくれ」と、選手を激励して送り出した。

 部活動を初めてまだ5年と歴史が浅い新潟医療福祉大学も、J1のアルビレックス新潟が常に援助し、若杉透取締役は顧問として部をサポートし、選手はグングン育ってきた。大会前の豪雪で満足な練習ができず、駒沢大学に敗れたものの十分な成果を挙げている。

 鹿屋体育大学もすでに3回雪に見舞われた上、桜島の噴火が止まず、グラウンドは灰で芝が痛んでしまう悪条件を乗り越えての出場だ。福岡大学と夏の総理大臣杯の決勝を争ったのは高知大学。関東から出場の4校はベスト8にも残らない、史上初の惨敗になった。

 もう地方校はただ蹴って走るだけの試合などしていない。どこも基本技術は向上し、パスをしっかりつなぎ、戦術も理解するチームプレーが上昇している。地方へのサッカーの普及は、日本の将来を考えると喜ばしい流れだと思う。

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