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vol.453-2(2009年6月19日発行)
滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者
IOCと駆け引きを始めたMLB

 2016年夏季五輪での実施競技入りを目指す7競技(野球、ソフトボール、ゴルフ、7人制ラグビー、空手、スカッシュ、ローラースケート)の関係者が、スイス・ローザンヌでの国際オリンピック委員会(IOC)理事会でプレゼンテーションを行った。8月13日にベルリンで開かれる理事会で7競技が2競技に絞り込まれ、理事会が推薦した2競技が10月9日の総会(コペンハーゲン)で投票にかけられる、という流れだ。

 現在のところ、ゴルフと7人制ラグビーが有力という情報が流れている。タイガー・ウッズら世界トップ選手の出場が期待されるゴルフ、欧州や南半球で人気が高いラグビーがリードしている、という分析だが、やはり気になるのは野球の動向である。五輪から除外された最大の原因は、米大リーグ機構(MLB)が選手を五輪に派遣しなかったことにあると言われ続けてきたが、今回、MLBはどんな態度を示したのか。

 国際野球連盟(IBAF)が行ったプレゼンテーションには、MLBのボブ・デュパイ最高執行責任者や、MLB選手会のドナルド・フェア専務理事が同行した。

 IBAFの公式ホームページが、プレゼンテーションの内容を紹介している。メジャーリーガーの派遣に明確な言及をしていないのは、各チームのオーナーの考えが一様ではないからだろう。しかし、興味を引くのは、MLBがIOCに対し、ビジネス上の駆け引きを始めたことである。

 IBAFは「8チームによる5日間の競技」を提案し、その上でMLBに関するビジネスの条件を持ちかけている。

 五輪で野球が採用された場合、野球の実施期間中はMLBの試合をテレビ中継せず、メダルが決まる最終日は試合も実施しない。さらに、MLBはIOCとマーケティングで協力関係を結ぶ、というものだ。

 IOCとMLBは、世界規模のスポーツビジネスを展開する上で「商売敵」と言われてきた。ところが、今回のプレゼンテーションをみると、その流れが変わってきたようにも見える。なぜテレビ中継の話を持ち出したのか。そこには巨額のマネーが動く放映権料の取引が絡んでいるに違いない。

 まだ推測の域を出ないが、MLBが主導するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が、米国内で思ったほど人気を集めていないことにも関係しているのではないか。WBCの商売がうまくいかないのなら、五輪を利用したビジネスが展開できると考えているのではないか。そんな見方もできる。

 日本と同様、米国も五輪に熱狂する国民が多いことで知られる。そして、何と言っても2016年五輪はシカゴで行われる可能性が十分あるということだ。もしシカゴに決まれば、MLBはビジネスチャンスがあるとにらんでいるはずだ。「互いに手を握って、やってみませんか?」。MLBはそんな第1球をIOCに投げたように思われる。

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