スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
vol.511-1(2010年11月24日発行)
松原 明 /東京中日スポーツ報道部
「アメフトに掛ける地方学生の情熱」

 昨年から全国規模に広がった、学生アメリカンフットボール選手権大会は、地方代表校と関東のリーグ代表との出場決定戦が始まった。

21日、川崎球場で行われた2試合は北海道代表・小樽商科大学、東北代表・東北大学は、それぞれ早稲田大学、法政大学に挑戦してともに完敗し、全国制覇への道は険しいことを改めて知らされた。

 東北大学は、法政大に16ー51、小樽商科大学も、早大に13ー56。身体能力、戦術、すべて関東のレベルは上だった。

 感心したのは、地方校のアメフトに捧げる情熱である。法政大学監督、青木均氏は「公式戦(リーグ)とは違うメンバーで臨みましたが、相手は気負い過ぎていたんじゃないですか」と、気遣うほどの東北大学選手、学校全体の意気込みが伝わってきた。

 「僕らはこの1年間、打倒関東を目指してあらゆる準備をしてきました。だから、その最善の努力をしても結果が出ないのはものすごく悔しい」と、弾丸のラッシュを見せ、99ヤードの最長ランを記録した、東北大学主将、RBの浅井一浩は涙を流して言う。

 これは、小樽商科大の主将、堂守信孝も同じだった。最初は笑顔も浮かべて会見に答えていたが、途中から涙があふれて絶句。帰山利文監督が助けを出すほどの入れ込みようだった。

 両校とも、選手は50人前後。用具も練習場も満足にない。部員はほとんどが、入学してから勧誘して集めた集団である。有名校のように経験者が殺到する大学ではない。「だから、どうしても、どんな環境でもやりたい、という学生を入部させ、教え込んで鍛えたチームなんです。それだけに、みんな情熱があります。気概はどこにも負けません」と、2人は口をそろえた。

 東北大学は、選手以外のサポート・スタッフ学生30人が支えている。相手の研究、分析は理系の選手が多いだけにお手のもの。負けはしたが法政大学のスキを突く動きも見せて、ときにはたじろがせた。

 「芝生のグラウンドはないし、人工芝の経験もありません。雨が降るとどろんこになってしまう。それでも、他のクラブと共用の練習場ですから、やれる限りやります」と、浅井主将。この悪条件は小樽も同じだった。

 全国への門戸は開かれた。日本一への道は遠いが、その天下を目指す地方校の情熱には、近来にない学生のさわやかさを感じた。

 学生スポーツは、この意気込みが大事なのではあるまいか。金沢・錦丘高校から進学した浅井主将は、卒業後、大学院へ進学。後輩への援助を始める。「代々の先輩がされてきたことを、今度は、僕らがやる番です。ウチの伝統を受け継ぎます」。地方に次第に根付くアメフト。この魂のフットボールは日本の将来を明るくする。

筆者プロフィール
松原氏バックナンバー
SAバックナンバーリスト
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件