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vol.494-1(2010年6月22日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

ツイッターとスポーツ界

 最近、ツイッターに登録してみて、いろんな「つぶやき」を拝見している。自分自身がつぶやくことは少ないのだが、多くの著名人のツイートを見ている中で興味深いことに気がついた。スポーツ界における新たな可能性といってもいい。

 たとえば感心したのは、日本ハム・ダルビッシュと一般男性とのやりとりである。その男性は、ダルビッシュにこう尋ねる。

 「野球好きの35歳の親父ですが、最近仕事が休みの日は、同僚とキャッチボールしてます。まだまだ全然下手ですが、ダルビッシュさんみたくは無理ですが、少しでも、上手く投げれるようになりたいです。野球経験がまったくないのに、35歳からなので、時間はかかりそうですが」

 ダルビッシュはこのような初心者に丁寧に答えている。
 「野球で1番大切なのは『上手いか』よりも『楽しめるか』だと思います。向上心はもちろん大切ですが、何より野球を楽しんでくださいね」

 そして、男性がまた言葉を返す。
 「有難うございます。これからも楽しみながら野球をします。また、相談するかもしれませんが、よろしくお願いします。ダルビッシュさんも、怪我に気をつけて頑張ってください。いつも応援してます」

 キャッチボールさえままならない一般の人が、日本球界を代表する投手とじかに言葉を交わす機会はまずないだろう。まして悩みを打ち明けたり、相談することなどこれまではありえないことだった。しかし、このツイッターという手段が広まる中で、トップと底辺を隔てていた壁が簡単に取り払われ、明らかに従来よりもハードルは低くなっているように見える。素朴な質問に、野球をきわめたダルビッシュが「上手いか」より「楽しめるか」と答える言葉にも重みがある。そこには野球人の思想のようなものがにじみ出ている。

 サッカー・ワールドカップを語っている人を見れば、それは世界規模である。ハッシュタグという記号(#)に「2010WC」などW杯関係のキーワードを打ち込んで検索すれば、日本語だけでなく、英語もスペイン語も韓国語も出てくる。テレビでサッカーのライブ映像を見ながら世界中のだれかが何かを言おうとしているのだ。

 確かにさほど意味のないつぶやきが大半ではある。しかし、あらゆる壁が取り払われてつながる、という意味で、全く別種の巨大メディアが登場してきたような印象だ。

 一般の人たちの多くは匿名だが、誹謗中傷がほとんど見られない、というのもツイッターの特徴といえる。匿名とはいっても、自分のプロフィールを記し、過去のつぶやきもすべて公開されているので、不作法なコメントを発信するのがはばかられるのだろう。

 真っ当な意見のやりとりが出来る隔たりのない場。トップと底辺の距離が遠く、「するスポーツ」と「見るスポーツ」が切り離されているような現状を考えると、ツイッターがスポーツ界の"接着剤"となるかも知れない。そんな期待を抱かせる。

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