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vol.517-1(2011年1月28日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

地域密着型プロの拡大・乱立に警鐘

 男子バスケットボールの日本リーグ(JBL)に所属するレラカムイ北海道の運営会社「ファンタジアエンタテインメント社」が、経営難からリーグ年会費を納められず、選手への給与遅配なども問題になってリーグから除名されたのは19日のことだ。あれから1週間余り。処分決定によって運営権はJBLの直轄会社に譲渡され、名称も「北海道バスケットボールクラブ」に変わった。ただし、この問題は単なる1クラブの騒動とは思えない。少し視野を広げれば、全国いたるところで地域密着を掲げたプロクラブが経営難に陥っているからだ。

 野球の独立リーグでは、関西や東海地方を活動拠点として設立された「ジャパン・フューチャーベースボールリーグ」が2球団のみの参加しかなく昨年1シーズンで姿を消した。四国・九州アイランドリーグでも、福岡レッドワーブラーズが09年限りでリーグ戦参加を休止し、長崎セインツも昨年をもって解散に追い込まれた。関西独立リーグも所属球団の脱退や選手給与のカットなどが問題になり、経営的には相当な苦労を重ねている。

 「地域密着」の本家本元といえるJリーグも同様だ。今年に入ってからは、経営難にあえぐJ2の水戸ホーリーホックがJリーグのtoto基金(スポーツ振興投票対象試合安定開催特別会計)から借りた3000万円を返済できず、Jリーグの公式試合安定開催基金から再び3000万円の融資を受ける形で借金の振り替えを行った。公式試合安定開催基金は05年から導入された制度だが、水戸だけでなく、これまでもザスパ草津、FC岐阜、大分トリニータが融資を受けている。

 Jリーグは今年、1部18クラブ、2部20クラブの計38クラブにまで拡大した。リーグからすれば、全体的にはサッカーファンが増えるのだから、拡大は決して悪いことではない。サッカーの理念に共鳴した他競技もこれに続き、地域密着型のプロが乱立する時代になった。しかし、プロとしての経営基盤や経営手法が確立されないまま急速に拡大を続けた弊害が、じわじわと表面化している。ここは少し立ち止まって経営の実態を足元から見つめ直すべきではないのか。

 レラカムイは、07年に設立以降、3季連続でリーグトップの観客動員数を誇ってきた。ところが、大口のスポンサーが見つからず、選手にかかる人件費を抑制できなかったことなどが経営難の原因になったといわれている。また、収入アップを図るため、リーグに試合数を増やすよう求めたが、経費がかさむことに難色を示す企業チームも多く、望んだほど試合が増えなかった事情もあるという。リーグの運営方式との間にも齟齬が生じていたのだ。

 レラカムイをめぐっては、さらに驚くことがあった。フ社はリーグから除名処分を受ける直前、中国企業と資本提携を結んでいたという。地域密着を掲げる日本のスポーツクラブを、投機目的の外資が買いあさりに来ているのだろうか。見逃せない事実だ。

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