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vol.538-1(2011年8月29日発行)

滝口 隆司 /毎日新聞運動部記者

減少続く五輪立候補都市と中東での秋開催

 2020年夏季五輪開催地の立候補受け付けは、9月1日に締め切られる。招致を正式に表明しているのは東京、ローマ、マドリード、イスタンブール、ドーハの5都市で、近年の五輪招致レースではまれに見る少数の争いとなりそうだ。

 最近の夏季五輪の立候補都市数をみると、2004年=11都市(開催地はアテネ)、2008年=10都市(北京)、2012年=9都市(ロンドン)、2016年=7都市(リオデジャネイロ)と減少傾向が続いている。

 冬季五輪も同様だ。2006年=6都市(トリノ)、2010年=8都市(バンクーバー)、2014年=7都市(ソチ)、2018年=3都市(平昌)という具合だ。開催地決定は2段階で行われ、1次選考で絞り込まれるのだが、18年冬季五輪に名乗りを上げた3都市はどこも振り落とされず、すべて最終選考に残った。

 なぜ、五輪を開催したいという都市が減ってきたのだろうか。当然考えられるのは、大会の肥大化に伴い、開催できる都市が世界的に少なくなってきたということだ。さらに、経済発展を遂げている一部の国や地域を除けば、欧米を中心とする世界的な景気後退もこれに拍車をかけているだろう。また、国際オリンピック委員会(IOC)が政府の財政保証を求めるようになり、各都市は赤字が出た時の補填を政府に了解してもらわなくてはならなくなった。こうした事情から立候補には確固たる財政基盤や政府支援が必要となり、簡単には手を挙げられなくなったのだ。

 今回も南アフリカで立候補を模索する動きがみられたが、政府が首をタテに振らず断念。米国は、IOCとの収入分配をめぐるビジネスの交渉がまとまらず、国内に開催を希望する都市があるにもかかわらず、立候補を見送った。

 一方、東京は4000億円の開催準備基金を用意し、スポーツ基本法に政府の資金確保が明記されたこともあって強気だ。しかし、日本企業のスポンサー熱は冷えており、国際スポーツ界が日本企業に寄せる期待はかつてほど大きくはない。また、震災復興や原発事故による放射能汚染の解決にめどが立たない中、世論の支持を得るのも容易ではない。

 そして何より気になる動きが、中東カタールのドーハが締め切り直前に立候補を表明したことだ。ドーハは夏の暑い時期を避けて秋に五輪を開催したいとIOCに要望し、水面下で協議を続けていたとされる。おそらく、IOCがOKサインを出したから立候補に踏み切ったのだろう。現在、夏季五輪は7月15日〜8月31日の間に開催することが原則だ。しかし、事前申請があれば変更もでき、五輪憲章では開催日程はIOC理事会が決定することになっている。

秋開催は、他のスポーツイベントの日程にも大きく影響を与えるが、五輪開催を希望する都市が減る中、IOCの理事メンバーは、秋開催のデメリットに目をつぶってもいい、と判断したに違いない。何よりオイルマネーで資金的に潤う中東だ。カタールでは2022年のサッカー・ワールドカップ開催も決まり、それに向けて各種施設も整備される。さまざまな条件をみても、ドーハが最有力候補に躍り出たとの印象は強い。

 いずれにせよ、五輪開催を希望する都市が減ることは、オリンピック・ムーブメント(五輪精神を広める運動)にとっても、五輪財政にとっても大きな危機だ。IOCはそのことに敏感に反応しているのではないか。

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