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vol.566-1(2013年 3月18日発行)
岡 邦行 /ルポライター

原発禍!「フクシマ」ルポ―3

 JR大宮駅から東北新幹線に乗車し、福島駅で下車。そこから福島交通か、はらまち旅行のバスで川俣町・飯舘村を経由し、私は南相馬市に行く。バスに乗りながらも随時、放射線量計を手に計測しているのだが、この1年間の放射線量はほとんど変わらない。飯舘村に入ると途端に高くなる。窓を締め切った車内でも、毎時0・8〜1・3マイクロシーベルトだ。屋外なら3倍以上は計測されるだろう。
 3・11以来、私は何度も飯舘村を訪ねているが、全村民が避難を余儀なくされたように、放射線量はかなり高い。
 一昨年の10月、3・11から半年後の10月。飯舘村役場を訪ね、役場前のモニタリングポストを見ると、毎時2・64マイクロシーベルトと表示されていた。「高いなあ」と驚いていると、村民のAさんが苦笑しつついった。
 「そこは除染されてっから低いんだ。信じたらダメだべ」
 たしかにそうだった。A さんの案内で村役場周辺を計測すると、3以上は当たり前。飯舘村柔剣道場前のグラウンドはセイタカアワダチソウが生い茂り、その近くの茂みなどの放射線量は10以上あった。正直、私は吐き気がした。

 昨年の1月末。私が卒業した原町高校の後輩である、飯舘村の草野小学校教頭・Yさんを取材した。
 「子どもたちは鬼ごっこもできません・・・」
 会うなり、そう私に衝撃的な言葉を口にした。
 3・11から半年が過ぎた頃だったという。ようやく避難先の川俣町の体育館が使用できるようになり、2年生の児童20人を前にYさんは聞いた。「何やりたい?」「鬼ごっこ!」「よし、みんなでやろう!」。ということで、子どもたちは一斉に走りだした。
 ところが、鬼ごっこをやりはじめると8人がつぎつぎとぶつかった。それだけではなかった。廊下を歩いていても児童たちは正面衝突をしてしまうのだ。
 その原因は、もちろん成長過程の大事な時期―ゴールデンエイジに半年間も自由に遊べなかったからだ。それに栄養不足にも問題があった。避難所の給食は炊き出しのおにぎりと食パン・イチゴジャム。それに牛乳という給食で、野菜や魚貝類などは放射能物質に汚染された可能性があるため、煮物や汁物などの献立はなかった。児童たちが笑顔を見せたのは、カレーライスがでたときだったという。
 Yさんはいった。
 「子どもたちはストレスが溜まるだけでなく、肥満・骨密度の減少・筋力の低下・抑鬱傾向・自己有能感の減少も懸念されます。もう将来のことを考えると心配でなりません・・・」
 
 福島駅前からバスで約1時間40分。ようやく南相馬市に着く。最早、驚かないが、マスクをしていない子どもたちが多い。保護者は放射能に慣れ、麻痺してしまった・・・。
 原町第一小学校の前をバスは通過する。が、昼休みの校庭でマスクをして遊んでいる児童は数えるほどだ。これでいいのだろうか。
 一昨年10月初旬。私は原町一小の除染作業を取材した。黙って見ていたら、取り除いた校庭の表土や花壇の土壌は校庭の片隅に穴を掘り、韓国製の「BENTOMAT」という青色のマットを敷いて埋めていた。その厚さ1センチのマットには、放射性物質を除去する効果があるという。しかし、これが除染といえるのか。私の知人は、揶揄を込めて「あれは、単なる"移染"だ。汚染土をあっちから、こっちに移してるだけだ」といっていた。その通りだ。
 その放射能で汚染された土壌、枯れ葉、枯れ草などを埋めた上で、今や子どもたちは遊んでいるのだ。除染当時は柵で囲まれていたが、もう柵は取り外されてしまった。
 小学校前のパン屋の店主である、南相馬市少年野球事務局を切り盛りするTさんが不安顔でいった。
 「一応、除染しているといってる。校庭のケヤキの枝なども切ったが、大丈夫かなあ。子どもたちは夕方から校庭で練習をしているんだけどね・・・」
 福島第1原発から北へ37キロ圏内に位置する、南相馬市は特異な存在になっている。20キロ圏内の警戒区域もあるし、緊急時避難準備区域(昨年4月半ば解除)と計画的避難区域、さらに年間の積算放射線量が20ミリシーベルトを超えると予想されるホットスポット(特定避難勧奨地点)も擁するのだ。
 次回から南相馬市の現実をレポートする―。

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