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vol.572-1(2013年 4月24日発行)
岡 邦行 /ルポライター

原発禍!「フクシマ」ルポ―8

 2年2ヵ月が経った今も、地震・津波・原発事故に加えて風評被害の4重苦に喘いでいる福島県は、3・11で1790余人の死者・行方不明者をだした。原発事故の犠牲者も多く、避難先での生活に耐えられずに亡くなったお年寄りもかなりいる。双葉町に住んでいた私の高校時代の恩師も、避難先の寒い体育館で肺炎になって亡くなった。カンニングも喫煙も、パチンコまでも見逃してくれた数学の先生で、大好きだった。5月2日が3回忌。友人とお線香をあげに行く。
 今年1月には伯父も亡くなった。遺体が安置されていた部屋の中の放射線量を測ったら、なんと毎時0・8マイクロシーベルトだった。いわゆるホットスポットの地域に住んでいたが、認定されなかった。何故なら敷地内の一番低い場所の線量を報告されたからだ。電事連(電気事業連合会)が自治体に配付した除染マニュアルには「放射線量は一番低い数値を報告せよ・・・」と記述されていると、知人が教えてくれた。伯父は放射能にまみれてあの世に旅立った・・・。

 福島県の、とくに原発に近いゴルフ事情はどうなっているのか―。
私は、帰郷するたびに鹿島カントリー倶楽部に行き、支配人のFさんと話をする。
 「うちは知っているように、震災から84日後の6月4日から仮営業をやっていますが、去年の冬はほとんどお客さんがこなかった。放射能を恐れてだと思うんですが、2年目のこの冬は他県ナンバーの車のお客さんが多い。もう放射能は怖くないんですかね。その辺を考えると複雑な思いです。原発事故のことは忘れて欲しくないですからね。唯一、ジュニアのゴルファーはこない。それだけはいいんですけど・・・」
 そういってFさんは、完全にクローズした西コース9ホールを案内した。もうグリーンもフェアウエーも雑草だらけだ。芝は土色に枯れ、1メートルほどの枯れたセイタカアワダチソウが憎たらしい。
「3・11でうちの従業員は2人亡くなり、あの日ここでプレーしていたメンバーも犠牲者になっている。この惨状を目にしたら、嘆くでしょうね。芝は人間と同じ生きものです・・・」 
 この3月、クラブハウスは取り壊され、跡地にはプレハブの事務所が建てられた。
 私の実家から車で約10分。金沢ゴルフ練習場を営むKさんに会った。3・11の際、いち早くKさん家族は避難した。とにかく、放射能汚染から身を守るには遠くに避難すべきだと考え、会津若松から新潟に行き、そこからなんと長崎県の佐世保市在住の親戚の元に避難した。
「こうしてね、一応は営業をしてるけど、今も佐世保に避難していて、親父や兄たちとローテーションを組んで、佐世保から交代でここにきてね、営業をやっている。正直いって、南相馬市に限らず、放射能で汚染された福島には住むべきじゃないと思う。とくに子どもはね。10年後か、20年後かはわかんないけど、へんな結果がでたらどうするんですかね・・・」
 そういってKさんは、複雑な表情を見せた。

 昨日の22日付の毎日新聞は1面で「甲状腺検査結果を開示 市町村別 福島県、請求拒めず」と報じた。これはスクープだろう。それによると、2011年度に県は子ども3万8114人の甲状腺1次検査を実施。その結果を開示することを渋っていたものの、ようやく開示したという。
 その結果は、A1、A2、Bの段階はあるものの、2次検査が必要なBと判定された子どもは186人(0・5%)であった。ちなみに南相馬市の子どもは9638人が検査を受け、48人がBだった。全体でA1とA2は3万7928人(99・5%)だが、本当に2次検査を受けなくていいのか。この辺りが曖昧なのだ。これまでと変わらず県民健康管理調査検討委員会は、癌患者が確認されても「被曝との因果関係は考え難い」といってきたが、何かと問題のある委員会。なにせ座長の県立医大副学長・山下俊一は、3・11後「福島は広島や長崎に勝ち、世界一有名になった」「毎時100マイクロシーベルトでも問題なし」などのトンデモ発言を繰り返してきた問題の人。こういった人を雇っている県知事もどうかと思う・・・。
 とにかく、子どもたちを護る。それが先決ではないか―。

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