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vol.731-1(2017年10月10日発行)
岡 邦行 /ルポライター

原発禍!「フクシマ」ルポ95―容認する

 10月2日、私は九州・福岡にいた。この日は8年前の夏、大分県立竹田高剣道部主将・工藤剣太君が熱中症で倒れて死亡した事故を巡り、県教育委員会職員の元顧問らの賠償責任が問われた訴訟の控訴審判決が福岡高裁であったからだ。
 その注目すべき判決は―。裁判長は元顧問に「重過失があった」と認定。100万円を請求するように大分県に命じた一審大分地裁判決を全面的に支持し、県側の控訴を棄却した。
 まさに画期的な判決だった。「指導の1つ」と称し、部員に対し理由なき暴力を振い、さらに暴言を吐く部活動の指導者は、今回の判決を重く受け止めるべきではないか。
 たしかに教員である公務員が公務中に起こした損害の責任は、国家賠償法によって負うことはないと定められている。重大な過失などがあった場合に限り、自治体は公務員個人に請求できるが、公務員に負担を求める〝求償権〟が行使されることはほとんどない。要するに元顧問らの過失を認めた今回の判決は、厚い壁に風穴を空けたのだ。
 判決後に行われた福岡市内での報告集会。地道な裁判闘争を続けた剣太君の両親、工藤英士さんと奈美さんは、支援者を前に深く頭を下げて言った。
 「私たちだけでは、ここまでできませんでした。ありがとうございます。やっと剣太に合格点を出してもらえると思います・・・」
 その言葉に目頭を熱くしつつ私は、別件取材のため大分・別府に向かった・・・。翌3日、大分合同新聞は1面トップで報じた。

 原発禍の街の小・中学校の部活動や体育授業などでの事故や事件は? 児童虐待やいじめなどは起きていないか―。
 この夏、私は故郷・南相馬市の教育委員会に3・11から今年7月末までの約6年半に各学校から出された報告書の開示請求をした。
 南相馬市には小学校15校(在校生2158人、4月6日現在。以下同じ)、中学校6校(1265人)あるが、私に開示された報告書はA4判の用紙62枚で、件数はたったの11件。津波による死亡、火遊び事故、器物破損、交通負傷事故、行方不明事故、万引きなど。児童の自殺の報告書もあったが、その自殺の理由は詳述されていなかった。部活動や体育授業での事故・事件もいじめ問題も起きてないという・・・。
 私は疑問に思った。それというのも今年2月に南相馬市の中2の女子生徒が同級生から「汚い」などと言葉や態度によるいじめを受け、自殺したという新聞報道を読んだからだ。その件を教育委員会に質すと「現在、第3者調査委員会を設け、いじめと自殺の因果関係を調べています。報告書はまだ出されていません」とのことだったが、はたして第三者調査委員会のメンバーは誰が選出したのだろうか・・・。
 今年の4月、文科省は原発事故で福島県から県内外に避難した児童・生徒に対するいじめが6年間で199件あったと発表した。だが、実際はもっと多いのではないか。3・11から1年ほど経った頃だ。避難先から帰った児童が、避難しなかった仲間から「今頃、何で帰ってきたんだ」「お前の家は故郷を棄てたんだろう」などと言われるいじめに遭い、親と再び避難先に戻ったという話を、私は何度も耳にしたことがあるからだ。

 一昨年の4月。年間被曝線量が20ミリシーベルトを超える特定避難勧奨地点(ホットスポット)の解除(14年12月)を違法とし、南相馬市の住民808人が「南相馬20ミリシーベルト撤回訴訟」を起こした。その第9回口頭弁論が10月18日、東京地裁の103号法廷で行われる。午後12時30分から原告団は経済産業省前で抗議アピールをし、2時からの裁判に臨む。96席の傍聴席を満杯にしょうではないか!

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