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サッカーコラムVOL.001<06.03.10>

チャンピオンズ・リーグの決勝トーナメント始まる

    

【大坪 正則/帝京大学経済学部教授】

 

 チャンピオンズ・リーグが面白い。2月21日からヨーロッパのクラブ最強の座を目指して、グループリーグを勝ち上った16クラブによる決勝トーナメントが始まった。5月17日の決勝戦まで熾烈な戦いが期待される。

 

 ワールドカップやオリンピックのように、国代表チームによる4年に1度の催しと異なり、チャンピオンズ・リーグはヨーロッパのクラブが毎年優勝を争うビッグ・イベントである。ヨーロッパのクラブには世界中の各国を代表する有力選手が数多く所属しており、特に、チャンピオンズ・リーグ常連の強豪クラブには、それこそ、スーパースターに価する選手がひしめき合っている。そのために、見方によっては、国代表のワールドカップよりも出場選手の顔触れが良く、また、面白い試合が期待できるために、近年、チャンピオンズ・リーグの人気はうなぎ登り状態である。

 

 チャンピオンズ・リーグが、何故かくも注目を集めるようになったのか?どうも、1995年のボスマン裁定に起因するようである。ボスマン裁定は、1991年、ベルギーの選手、ジャンマルク・ボスマンが移籍を希望した際に、所属クラブが移籍先クラブに法外な移籍金を要求したために移籍が出来ず、そのために、「移籍が出来ないのは、職業選択の自由の阻害」と訴えたことに端を発する。裁判では、労働者の自由な移動を保証し、競争制限行為を規制するローマ条約をサッカー選手に適用できるか否かが争点となった。時あたかもEUでは、1993年発効のマーストリヒト条約によって、EU加盟国の市民の移動・移住が自由になっていた。ボスマン有利の環境の下で、ヨーロッパ司法裁判所は、1995年、ボスマンの訴えを認めた。

 

 その後、FIFA、UEFA、欧州委員会が協議を重ね、2001年9月から23歳以上のサッカー選手は契約(5年以内に制限)終了後、移籍金なしに、どのクラブとも契約を交わすことが出来るようになった。この結果、ヨーロッパのサッカー界は、アメリカのMLBがフリーエージェント制を導入した時と同じように、有力選手がより高い報酬を求めてクラブを渡り歩くことが可能となった。かかる環境下では、金持ちクラブが金の力で世界中から力のある選手を集めるようになる。かくて、チャンピオンズ・リーグの決勝トーナメントは、世界有数の選手たちが所属するクラブによって戦われることになる。だから、面白くないはずがない。

 

 しかしながら、ヨーロッパのトップクラブに世界中から有力な選手が集まることによって、クラブが100年の間行ってきた、地域の若者を育成し、鍛え上げる伝統的手法が崩壊しかねない危険に晒すことになった。何故なら、成長中の若者が試合に出るチャンスが無くなってしまったからだ。特に、スペインの若手育成が危ないと言われており、そのために、スペイン代表がワールドカップで最後まで残る可能性は低いと見られている。

 

 逆に、フランスは下馬評が高い。フランスは、国内の税金が高いことも相まって、有力選手はフランスを離れて、他国でプレーしている。そのため、フランスのトップリーグは、5大国(イングランド、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス)の中で最低の収入に甘んじている。しかし、そのことが、若者に努力次第でトップリーグで活躍できる機会を数多く与えることになり、ワールドカップでは優勝争いをするだろうと予想されている。

 

 チャンピオンズ・リーグが終れば、ワールドカップ。チャンピオンズ・リーグで活躍したクラブと選手を念頭に置いてワールドカップを観戦すると、勝負に納得する場面が多々あるかも知れない。これからのヨーロッパサッカーは目が離せない。

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