大統領のブログ

2008年7月16日

海に遊ぶ
共和国「こんがりここなつ島・海洋冒険学校」
プロデューサー:上柿和生(うえがき・かずお)

 島を囲むサンゴ礁の海は、遊び心に創造力があれば、凝った遊具や仕掛けにあふれた遊園地やテーマパークよりもズッーとおもしろい。旧い船着場の岸壁は、冒険遊び場としては最高の所だ。海の底が透き通って見える真っ青な水面に向かって、足から頭から飛び込むだけで、脳からドーパミンが一気に噴き出す。ひねったり、宙返ったり、空を駆け抜けたり、思いのままに、海面へ向かってドボン、ドボンと飛び込むのだ。

 この遊び、名付けて「ドボン!」 男の子も女の子も、おじさんもおばさんも、嬌声、悲鳴、喚声を上げて水中に没し、白い泡が海面に広がるころに顔を出す。

 決死の覚悟で飛び込んだ子は、忙しく手のひらで海水を拭うと、半泣き顔からいっぺんに満顔の笑みに変わる。気の弱い子は1時間以上も岸壁から水面を眺めながら、コワーイ、イヤダ、コワーイ、ドウシヨー! などと口走り、仲間にはダイジョウブ、ホントウニコワクナイと、同意と同調を求めながら、飛び込む決心をしていく。これは子どもたちにとって、生まれてはじめて自分の意志を固めるために必要な「葛藤」という心理状態を経験する貴重な体験だと思う。

 しかし状況は、励ます仲間や友達の声援に自尊心が追い詰められ、決心がつくというより、まさにヤケクソで恐怖を抱えて飛び込んだというのが現実だ。ところが、恐怖の世界を突き抜けると、弱虫だった顔が一変して、自信に満ちた自然児の顔に変わるのだから驚きというほかない。あとは憑き物が落ちたみたいに、10回も20回も飛び込み始めるのだから、子どもの力と勇気は素晴らしい。

 この岸壁から水面までの距離は、満潮時で1メートル60センチ程度、干潮時には軽く3メートルは超える。潮は動くので、干潮に向かう時は早く飛び込んで恐怖心を取り除けば、あとは面白いほど勇気と挑戦欲が湧起こってくる。その逆は、ひたすら恐怖心を隠しながら潮が上って来るのを待つ以外ない。どちらにしても、子どもたちは海の変化を目と身体で覚えることになる。彼らは、この自然のメカニズムを知ると、本部棟の壁に張った潮時表を毎朝見るようになった。そして大好きな「ドボン」に行く予定を自らが組み、スタッフたちにその許可と同行をせがむのである。

 この「ドボン!」は、開国以来、参加者アンケートの遊び部門で毎回第1位を獲得して、その座は譲る気配がない。東京ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンやどこかのウォータースライダーより、ずっーと「ドボン!」がおもしろいと、子どもたちは異口同音に言う。仕掛けは、岸壁から伸ばした長い角材の飛び込みバーと、水面に10トントラックのチューブの浮き輪が2本浮かべてあるだけである。

 子どもたちは、仲間の歓声と勇気への賞賛で勇気を奮い起こし、その興奮の発露がまた挑戦する勇気を呼び覚ます。

 さあ、今年も、子どもたちの体重と跳躍に耐える頑丈な飛び込みバーを作らねばと、いま、青い水面を思い出している。
(つづく)

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