第36回ミズノスポーツライター賞発表(2025年3月4日)
■2025年度 第36回 ミズノスポーツライター賞 受賞作品
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「2025年度 ミズノ スポーツライター賞」受賞者決定
公益財団法人ミズノスポーツ振興財団では、1990年度から「ミズノ スポーツライター賞」を制定しており、2025年度で36回目を迎えます。この賞は、スポーツに関する報道・評論およびノンフィクション等を対象として、優秀な作品とその著者を顕彰するとともに、スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待し、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定したものです。
3月3日(火)、グランドプリンスホテル高輪で選考委員会を開催し、受賞作品および受賞者を以下の通り決定いたしました。
なお、この「ミズノ スポーツライター賞」の表彰式は、4月21日(火)にグランド プリンスホテル新高輪で行います。
■最優秀賞 (トロフィー、副賞100万円)
『デンさんのプール 杉本傳~水泳ニッポンを作った男』(小学館)
『デンさんのプール 杉本傳~水泳ニッポンを作った男』
大野 裕之 氏(おおの ひろゆき)
【 受賞者及び選考理由 】
●『デンさんのプール 杉本傳~水泳ニッポンを作った男』(小学館)
大野 裕之 氏(おおの ひろゆき)
日本で古式泳法が主流の時代に生徒とともに日本初の学校プールを作り上げ、水泳界に多大な貢献を果した大阪府立茨木中学(現・茨木高校)の体育教師・杉本傳(すぎもとつたえ)の生涯を丹念に掘り起こしたノンフィクションである。
杉本は明治期後半に大阪の裕福な家に生まれ、北摂茨木の当時「鶏学校」と呼ばれた旧制中学で学び、後に母校の体育教師となりグラウンドにプールを掘る。そして惜しげもなく私財を投じて水泳指導に尽力した。行動は破天荒でも考え方は合理的、
精神は常に謙虚さと寛容さを堅持した稀有な男の生涯と、近代泳法「クロール」への転換、オリンピックで世界に知られることになる水泳ニッポンの礎が築かれる過程を、茨木中学の生徒たちの「勤倹力行」の活躍に光を当てながら描いた大正から昭和初期にかけてのユニークな水泳史物語でもある。
著者自身も茨木高校出身で新校舎建設の発掘調査から明らかになった旧プール遺構の謎解きから始まる本作品は、単なる母校や母校の大先輩への好奇心的な関心にとどまらず、当時の人々が日々こまめに書き残した日記や記録、学校に残された数々の資料、
公的文書等を縦横無尽にパズルピースとして組み合わせ、若き日の川端、大宅の生の声を蘇らせるなど関係者の証言を交えながら、茨木が近代水泳発祥の地となっていった所以を闊達な筆致で活き活きと描きだしていく。
著者はスポーツライターを本業とする人ではないが、黎明期の日本スポーツ界に前例のない大胆な試みで水泳界に革命を起こし、大きな貢献を果たした偉大な先人の足跡を初めて明らかにした実に示唆に富んだ作品である。
■優秀賞 (トロフィー、副賞各50万円)
『凪の人 山野井妙子』(山と溪谷社)
『凪の人 山野井妙子』
柏 澄子 氏(かしわ すみこ)
【 受賞者及び選考理由 】
●『凪の人 山野井妙子』(山と溪谷社)
柏 澄子(かしわ すみこ)
女性フリーライターで日本山岳ガイド協会認定ガイドの資格を持つクライマーでもある著者が登山家、山野井妙子の半生を丹念に描いた。
2023 年夏から 2025 年まで 2 年をかけて妙子本人と夫の山野井泰史、幼馴染、山仲間の友人たちに取材し、裏付け資料として妙子の日記、妙子の友人の日記、パスポートの出入国記録も読みこみ敬愛の念を込めて緻密に丁寧に描いている。
本文中では登山用語が使われているが著者自身が登山家であること、登山に関する著作もこれまでに多数出しているなど、山を熟知している人が使う専門用語は文章に馴染んでいて文体に安定感ある。さらに山や自然風景の描写が非常に細やかなこともあって、
山の荘厳さや美しさ、あるいは奥多摩や伊東の山野井家周辺の豊かな自然を想像しながらスムーズに読み進めることができる。
またヨーロッパアルプス、ヒマラヤは言うに及ばず南米、北米、中国と挑んだ山が次々と現れるのには圧倒される。厳しすぎる経験も数多いが、山に詳しい作者の巧みなインタビューと取材はリアリティに溢れ、アルパインクライミングを描写することに成功している。
これだけ山を極め、数々の達成と困難、挫折を経験し、多くの人と山を通じて繋がっている圧巻の人生なのに、それでも静かな凪の人。「おわりに」で著者は「山野井妙子は力強い生活者でもあった。厳しい登攀を繰り返してきたが、日常と厳冬の氷雪壁は彼女の身体のなかに等しくあり、
両者はシームレスにつながっている」と書いている。そのことをまさに表現した切り絵の表紙装丁もとても良い。読み応えのある 1 冊である。
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主催:公益財団法人 ミズノスポーツ振興財団
選考:ミズノ スポーツライター賞選考委員会 [制定目的] スポーツに関する優秀な作品とその著者(個人またはグループ)を顕彰し、
スポーツ文化の発展とスポーツ界の飛躍を期待するとともに、これからの若手スポーツライターの励みになる事を願い制定
[対象領域]
【2025年1月1日~12月31日】に発行・出版・発表されたもので、主として新聞・雑誌・単行本等に掲載された個人もしくはグループで書かれたスポーツ報道、スポーツ評論、スポーツノンフィクション、など。ただし、インターネット上のウエブサイトなどで発表されたもの、社内報や広報誌等一般に販売されていないもの、一般の者が入手不可能な機関誌的なもの、翻訳書や専門学術書・誌、研究紀要等に掲載されたいわゆる学術論文はこの対象からは除く。
[表彰内容]
★最優秀作品 1本 (トロフィー / 賞金100万円) ☆優秀作品 1~3本 (トロフィー / 賞金 50万円)
[選考委員]
| 委員長 | 河野 通和 | (株)ほぼ日「ほぼ日の学校長」、『中央公論』『婦人公論』『考える人』元編集長 |
| 委 員 | 上治 丈太郎 | (公財)日本スポーツ協会 評議員 |
| | 杉山 茂 | スポーツプロデューサー/元NHKスポーツ報道センター長 |
| | 長田 渚左 | ノンフィクション作家 |
| | 田中 雅美 | スポーツコメンテーター |
| | 水野 英人 | (公財)ミズノスポーツ振興財団副会長 |
※敬称略・順不動
【お問い合せ先】
「ミズノ スポーツライター賞」選考事務局
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-16-15 代々木フラット401 スポーツデザイン研究所内
TEL:03(3377)4858 / FAX:03(3377)5028
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