スポーツデザイン研究所
topページへ
topページへ
講演情報へ
オリジナルコラムへ
SPORTS ADVANTAGE
   「批評性」「評論性」「文化性」の視点からスポーツの核心に迫る
最新GALLARY

FIFAワールドカップ2006ドイツ大会 ファイナルドロー ライプチヒ/ドイツ


(C)photo kishimoto


FIFAワールドカップ
2006ドイツ大会
ファイナルドロー
ライプチヒ/ドイツ

SPORTS IMPACT
  オリジナルGALLERY
(C)photo kishimoto
vol.280-2(2005年12月 9日発行)
岡 邦行/ルポライター

愛知大学野球連盟に加盟した中京女子大の「???」

葉山 洋/マーケティング・コンサルタント
   〜ホスト不在の国際試合〜
滝口 隆司/毎日新聞運動部記者
   〜Jリーグと早明戦から見えるもの〜
筆者プロフィール
バックナンバーリスト
SPORTS ADVANTAGE
無料購読お申し込み
オリジナルコラムを中心に当サイトの更新情報、スポーツ関連講座やシンポジウム開催情報などを無料配信しています。今すぐご登録下さい。
申し込みはこちらから
ホームよりエントリー
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望

愛知大学野球連盟に加盟した中京女子大の「???」
岡 邦行/ルポライター)

 12月4日朝。スポーツ紙を広げた私は、思わず驚いてしまった。
<球界初 中京女子大男子リーグ参戦 愛知大学連盟が加盟を正式承認>というタイトルの記事を目にしたからだ。

 スポーツ報知の記事を要約すると―前日の3日、27大学が加盟している愛知大学野球連盟は、理事会・総会を開き、記名投票の結果、賛成17(委任状4含む)反対10で、今年春に創部したばかりの中京女子大野球部の加入を承認した。同大学の谷岡郁子学長は「これまで降ろされたままのシャッターを上げる決断をしてくださったのは大変ありがたい」と感慨深げに話した。1時間半に及んだ話し合いでは、体格差などによる女子選手の安全面の不安や実力の違い、野球部を継続的に存続できるか、など議論が交わされた。しかし、最終的には「連盟は開かれた組織であるべき」、「女子だからといって反対すべきではない」という意見が反対意見数を上回った。

 11月10日には同連盟の理事長らが練習を視察。「実力差は別にして、(リーグに)十分参加できる印象を持った。危険を回避する基本的な技術は持ち合わせている」と判断。来春は5部リーグでオープン参加し、来秋から公式戦に臨むという。同大学の監督は「自分たちのやってきたことを試せる場を与えてくれて感謝している」と感激。選手は「男子と一緒にプレーできるスポーツはないので、与えられたチャンスを生かしたい」と目を輝かせた・・・。

 はっきりいって私は、この記事を読んであ然とした。愛知大学野球連盟が、どうして女子大学チームの加盟を許したのか理解できないからだ。硬式野球リーグで女子チームが男子チームと戦うのは前代未聞の快挙だという。

 たしかに話題としては面白いだろう。しかし、あまりにも危険が多すぎる。男子選手の打球や送球、投球されるボールは女子選手の比ではない。明らかに実力には差があるのだ。たとえば、男子選手が投げたボールや打球が、女子選手の身体を直撃したらどうなるのか。大怪我する恐れもあるし、当たりどころが悪ければ最悪の事態を招くことも考えられる。もちろん、野球に限らずスポーツをやる場合は、常に怪我などに見舞われる危険がともなっているのは当然だが・・・。

 ましてや中京女子大野球部は創部1年目。部員19人はすべて1年生であり、そのうち硬式野球経験者はたったの3人。その他の部員はスポーツ経験者らしいが野球初心者だという。それだけ知っても私は「ホント、大丈夫なの?」と心配になってしまう。練習を視察した愛知大学野球連盟の幹部たちは、真顔で「問題ナシ」の判断を下したのだろうか。

 さらにスポーツ報知を要約する。

 女子野球は軟式が主流で、近年の日本の女子硬式野球は、91年にプロ野球が選手の受け入れを容認。つづいて94年には東京六大学リーグが女子部員の登録を認め、翌年には米国出身で明治大学のジョディ・ハーラー投手が公式戦で初登板。

 チームとしては、97年に鹿児島県の神村学園高校が日本初の硬式野球部を創設し、同年に全国高等学校女子硬式野球大会を初開催。01年には初の女子野球世界選手権大会が開催され、日本女子代表チームが出場。同年には竹本恵(東大)と小林千紘(明大)の両投手が公式戦で対戦した・・・。

 早い話、男子チームの中で女子選手がプレーしたことはあるが、女子だけの単独チームが男子チームと公式戦で対戦するのは、今回愛知大学野球連盟に加盟した中京女子大が初めてになるのだ。
私は「女性は野球をやるべきではない!」と“差別”するつもりは毛頭ない。女子チームは同じ女子チームと対等の立場でプレーすればいいのではないか。そう私は考える。差別ではなく“区別”しているのだ。

 4年前だった。私は、日本大学と東京大学のオープン戦を観戦したことがある。結果は日大が大勝したが、終盤に東大は女子投手の竹本恵を登板させた。このときも私は、理解できなかった。正直、不愉快だった。試合後、顔見知りの日大選手たちに「どうだった?」と感想を求めた。彼らは、胸を撫で下ろしながら私にいってきたことを覚えている。
「冗談じゃないですよ。こっちが怖いですよ。思い切りセンター返しなんてして、もしも顔面に打球を当てたらと思うとビビった・・・」

 私は思う。中京女子大学が野球部を発足させたことはいいことだ。どんどん女性も野球に親しんで欲しい。しかし、はたして大学野球連盟に加盟する意味は本当にあるのか。たとえば、女子チームだけのリーグ戦を発足するというのならわかる。が、男子チームと同じ土俵に上がって野球をする意味はないはずだ。狙いはどこにあるのだ。危険をいっぱいはらんだ話題作り以外に考えられない。

 現在、日本には女子野球の普及活動に尽力しているNPO法人の日本女子野球協会があり、全日本女子硬式野球選手権大会や全国高等学校女子硬式野球選手権大会などを主催する一方、女子野球世界大会などの国際大会に出場する日本代表チームのサポート役を務めている。この日本女子野球協会に加盟し、優秀な指導者のもとで技術を磨く。同じ女子チームとの対外試合で競い合い、技術アップをすればよいのではないか。

 「今回の中京女子大の愛知大学野球連盟への加盟についての新聞報道が出る前、中京女子大側から連盟に加盟したいので協力して欲しいという話はありました。しかし、日本女子野球協会は日本野球連盟の傘下にあるため、全日本大学野球連盟の傘下にある愛知大学野球連盟への加盟を望んでいる中京女子大をサポートするのは筋違い。お断りしました。・・・ただし、たとえば、大学野球連盟の許可があれば、日本女子野球協会が運営する全日本女子硬式野球選手権大会などに出場することは可能です・・・」

 日本女子野球協会関係者は、そのようにいった。ちなみに来春、女子硬式野球部を発足すると発表した埼玉県川越市にある尚美大学は、プロ経験の指導者を迎えて日本女子野球協会に加盟する予定だという。

 私は、女子チームが男子チームと試合をすることに関しては、現在のところ反対の立場をとりたい。体力も違う。実力にも差がありすぎる。さらに危険がいっぱい、なのだ。


Copyright (C) Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。 →ご利用条件