スポーツネットワーク
topページへ
スポーツバンクへ
オリジナルコラムへ
          
GUEST-vol.001(2007年7月26日発行)
日系二世のNBAを読んで
新川 諒さん(読者プレゼント当選者)
【自己紹介】
 2歳のときにアメリカへ渡り、10年ほど向こうで過ごし、日本で中高を経て再びアメリカの大学へスポーツマネージメントを勉強するために渡りました。今はアメリカで2年目を終え夏休みのため日本に戻ってきています。秋学期は3ヶ月ほどイギリスへ短期留学する予定です。

 現在は様々なスポーツの世界で経験を積み将来はスポーツビジネスの世界で生きて行こうと思っています。

 田臥勇太が日本人として初めてアメリカに立ったプロバスケットボール選手と思っている方には衝撃の一冊です。私もそのうちの一人です。長年、アメリカでNBAを見てきて、スポーツビジネスの世界で生きて行こうとしている身としては、読んでおかないといけなかったものがこの『日系二世のNBA〜伝説のプレイヤーワッツ・ミサカとその時代』だと感じています。

 この本は、バスケットボールというスポーツだけを求めて読む方にはつまらなく、スポーツ以外の面を求める方にとっては盛りだくさんの一冊になっていると思います。大学バスケットボールの歴史的背景やスポーツ界の人種問題などが多く含まれているのですが、それ以上にこの一冊には「日系人」というテーマで、第二次大戦中にアメリカという国で生き抜いた人々の人生、とその時代に全米王者となったワッツ・ミサカという人物、が大きく取り上げられています。

 ここには様々なメッセージが含まれています。今、裕福な時代に生きているはずなのにすぐ妥協をしてしまう若者や、日本のスポーツは世界に通用しないと感じている方々にとって、三阪亙の人生とはお手本のようなものであるかもしれません。日系人にとっては普通に生きていくのにも辛い時期だったはずなのに、自分が活躍することで日系人が認められるという意識をもってコートに立っていた彼は、パイオニア以上の存在かと思います。私も現在アメリカの大学でスポーツマネージメントを勉強しているのですが、日本人があまり多い地域でないため、時代や環境が全く違うにせよ共感できる部分は少しですがあります。

 日本のバスケットボールが世界に通用しないと諦めている人にとって彼のプレイは、今後日本バスケットボールが世界に向けて対抗していくための見本となるのではないかと思います。戦争の真っ只中に、アメリカでは敵として見られてもおかしくない日系人の彼が、マディソン・スクエアガーデンという大舞台で全米のバスケットボールファンに認められたそのプレイは、現在世界を目指している日本人プレイヤー達は参考にすべきでしょう。

 私もスポーツビジネスの世界を目指すに当たって、様々な逆境が訪れると思いますが、田臥選手や伝説のプレイヤーであるワッツ・ミサカさんのようにそういった舞台へチャレンジしていく気持ちだけは忘れないでいようと思いました。様々なことを教えてくれるこの一冊は、スポーツファンだけでなく全ての人におススメです。

ペンネーム:元学生さん(読者プレゼント当選者)

 まずこの本を読むまで、ワッツ・ミサカ氏の存在を知りませんでした。当然、日本で最初のNBA選手は田臥勇太選手だと信じて疑ったことはありませんでした。

 多くの日本人も同じなのではないでしょうか。そのため、ワッツ氏の存在には正直とまどいました。今まで応援していた選手の「日本初」の称号がいつわりだったことへのショックと、MLB初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンのように、NBAにおいて有色人種の活躍の場を切り開いたことへのうれしさ、二つの感情がありました。

 ただ一点だけ、引っかかったのは、ワッツ氏が日系2世ということでした。日系2世は日本人なのか? 彼は両親とも日本人の移民なので、流れる血は完全な日本人です。しかし、生まれも育ちもアメリカで、第二次世界大戦後にアメリカ軍として日本に派遣された以外は、日本には来ていません。そんな彼が「日本人」初としていいのか? それは単に国籍の問題だけなのか? こんな考えをするのは自分が日本人だからでしょうか。欧米に比べて、日本は(韓国なども)ひとつの人種の割合がとても高いので、自分とは違う育ちの人たちに違和感があるのかもしれません。しかし、彼が日本人初のNBAプレーヤーということに反対するわけではありません。彼の残した実績は、賞賛に値すると思います。

筆者プロフィール
SAバックナンバーリスト
ページトップへ
          
無料購読お申し込み

advantage
adavan登録はこちら
メール配信先の変更
(登録アドレスを明記)
ご意見・ご要望
 

Copyright (C) 2004 Sports Design Institute All Right Reserved
本サイトに掲載の記事・写真・イラストレーションの無断転載を禁じます。  →ご利用条件