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100号記念メッセージ

■vol.107 (2002年8月7日発行)

【杉山 茂】 黒い取引にされた? フィギュアスケートの採点
【早瀬利之】 熟睡は夏バテに強い ― 不動裕里10時間睡眠で逆転の68
【松原 明】 川淵新会長の決断
【市川一夫】 スポーツ産業学会の役割


◇黒い取引にされた? フィギュアスケートの採点
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

外電によると、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長(ベルギー)は「仰天した」と言ったそうだ。誰もが同じ感想をもったに違いない。

今年2月、ソルトレークシティー(アメリカ)で行われた冬季オリンピックのフィギュアスケートの不正採点問題に関連した買収の疑いで、ニューヨーク連邦地検がロシア人容疑者を逮捕した、と発表したのである(7月31日)。

あの事件―ペアの採点で、フランス人ジャッジ(審判員)に不正があったとされ、ロシアに次いで2位となったカナダ・ペアにも金メダルが与えたれた前代未聞の一件である。

国際スケート連盟(ISU)が、2ヵ月後に不正な判定をしたとしてフランス人ジャッジ1人と同国スケート連盟会長を3年間の資格停止にしたことで、「終わったもの」と思われていた。

ところが、不正採点どころではなく、刑事事件に発展してしまったのだ。

否定のニュースを含めて、毎日のように状況が動いており、大会当時と同様、事実と断定すべき材料には欠けるが、花形競技をめぐってのスキャンダルだけに、オリンピックそのものへ与えるダメージは、極めて大きく、深い。

背景や底流として、フィギュアスケートが、他のスポーツに比べて、ショウビジネスに近いことが一因にある。

オリンピックや世界選手権でのランク(順位)が、ショウスケーター、プロ競技者としての「格」に響くのだ。

長野オリンピック(98年2月)の直後、オリンピックプログラムとは離れて東京で、メダリストを中心としたエキジビションが開かれた。

この時、メダリストの1人に、早くもエージェントが付き、このイベントへの出演料や、帰途の航空機のクラスなどの交渉に現れた、という。

要望された出演料は高額で、オリンピック閉幕直後のことだけに、主催者はそれこそ「仰天した」ようだが、人気、実力抜群の同選手を欠いては、と条件をほぼ受け容れた。

その選手が、本番以上のスマイルを東京のリンクで振りまいたのは云うまでもない。

今回逮捕された容疑者は、スポーツにとどまらず、数々の国際的な黒いマーケットで暗躍していた人物のようで、その取引品目の1つに「フィギュアスケートの採点」があったものか。

採点競技の客観、主観は、宿命的なテーマだが、そこに外部の者がからんでいたとなると、今後のなりゆきによってはオリンピックにおけるフィギュアスケートの"ありかた"にまで、火の粉は飛び散りそうだ。

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◇熟睡は夏バテに強い ― 不動裕里10時間睡眠で逆転の68
(早瀬利之/作家)

不動裕里が今季2勝目を上げた。

兵庫県で行われた女子ゴルフツアー、ヴァーナルオープンは8月4日が最終日だった。初日72(13位タイ)と出遅れたが、2日目70を出して4位に上がった。

しかし、夏バテは女子プロには辛い戦いとなる。

不動は2日目が終わった夜は早く寝た。見るべきテレビ番組もないので、夜9時ごろには就床したというから、お年寄りの就床時間。しかし、習慣となった朝4時から5時ごろの早朝起床はいつもと変わらない。それでも10時間も眠ったというから前日の疲れは充分にとれた。

この日は、夏バテ対策用にいつものミネラルウォーターをやめて、ナトリウムの入ったスポーツドリンクを飲んで戦った。それ以外は何も口にしていない。

全英で5位に入った丸山はスタート前に「あべかわ餅1個」を食べてパワーをつけたが、不動は試合中、何か口に入れると、リズムが狂うというので固形物はとらず、もっぱら水分補給だけで戦っている。5月のニチレイ・ワールドカップのときはミネラルウォーターを3本飲んだ。真夏とちがって、塩分の体外放出量は少ない。しかし真夏は塩分不足となる。そこで、スポーツドリンクを愛用する。

何よりも10時間睡眠が効をなした。全員が夏バテでスコアが伸び悩むなか、たった一人60台(68)を出して2位の天沼知恵子に5打差をつけて逆転優勝した。

それにしても、ギャラリーはたったの1553人とは少ない。女子プロゴルフ界は、話題性に欠ける。ファッション性も考えた演出が必要と思うが、それは選手一人一人の自覚の欠如としか言えない。

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◇川淵新会長の決断
(松原 明/東京中日スポーツ報道部)

就任前から矢継ぎ早に構想を打ち出している川淵三郎・日本サッカー協会会長が、その行動力で注目されている。

前任者の長沼 健、岡野俊一郎会長は「みなさん、どう思われますか」と意見を集約して動く慎重派だったのを思うと天地の差。ワールドカップ終了後に新時代へ一歩踏み出した日本サッカー協会のリーダーとして、先頭を切って走る。

日本サッカー協会はまだ旧態依然とした体質が残っており、外部から眺めていて、「これでは駄目だ」と改革を決意した点が多いに違いない。日本に求められているのは、この「いい、と思ったことは実行する」決断力だ。改革はいい方向に進むならどんどんやってもらいたい。

だが、気になるのは「自分と反対意見には不快な表情を露わにする」点だ。朝日新聞の潮記者が「裸の王様にならないよう」と、コラムに書いた記事に怒った。就任会見で「ジーコが失敗した時、会長の責任は」と質問されたときも、顔を真っ赤にして反論した。

いずれもまともな意見で、何も怒るものではないが、こういうことが度重なると、誰もが「言いたいことがあるけど、黙っておこう」と尻込みしてしまい、活性化しないのではないか。

みんな、良くなって欲しい、という願いを込めた忠言なのだ。これから、会長がどんな道を走るのか注目している。

私はどんどん意見を言いたい。何も恐れることはないのだ。そうしなければ日本サッカー全体が駄目になってしまう。

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◇スポーツ産業学会の役割
(市川一夫/スポーツライター)

先頃、スポーツ産業学会の第11回大会が早稲田大学国際会議場で開催された。

例年、海外から研究者や産業団体の代表を招聘し、基調講演、シンポジウムを行うのが通例となっており、今年は米国より、SGMA(スポーツ用品工業会)調査部長、IHRSA(国際ヘルス&フィットネスクラブ協会)国際部長が招かれた。

スポーツ産業学会は、バブル経済ピーク時、当時の通産省が「ゆとりと豊かさ」をテーマに余暇産業の育成を目指して(社)スポーツ産業団体連合会(スポ団連)を設立した際に、産官学連携が最重要と考え、産業側の全面的な支援で設立されたのがきっかけである。

当時、通産省の意向を受けた日本興業銀行頭取や新日鉄会長などが推進役となり、『スポーツビジョン21』(通産省産業政策局サービス産業課編集)の出版に参画するなど、順調なスタートを切り、大いに期待された。

しかし、学会の運営資金はスポーツ用品見本市を主催するスポーツ用品業界から提供されており、バブル経済がはじけ、スポーツ用品見本市が縮小されるに伴い、資金提供も年々先細りし、今年度は僅かに100万円になってしまうと発表された。会員や新たなスポンサー獲得、論文集の販売などを実行して、自前でやるという意欲も窺えるが、その運営には相当苦労があるようだ。

ちなみに、設立された90年には2000万円という破格の資金提供があり、従来の体育学会活動に飽き足らなかった研究者がわんさと参加した記憶がある。

さて、今年の学会の内容であるが、ワークショップ『公共スポーツ施設の民営化を考える』では、新宿区のスポーツ施設が民営化推進により、経営効率が著しく向上した事例や、近畿圏において、大阪ガス子会社が民間委託方式で施設の活性化を実現した事例などが発表され、時節柄、タイムリーで大変参考になる内容であった。

また、シンポジウムでは、『ワールドカップ後のスタジアム経営』をテーマに多くの問題提起がなされ、基調講演では、『米国におけるスポーツ参加の現状と問題点』と題し、サッカー以外のスポーツ参加率の減少、ファーストフード摂取による肥満傾向、スポーツ番組視聴率の低下、それらに伴うスポーツ用品業界の売上低迷などが調査資料を基に発表された。これらは日本でも同じ傾向にあり、スポーツ先進国におけるケーススタディということで、大変興味深かった。

スポーツ振興基本計画が示され、スポーツ振興くじ(toto)助成も開始されるなど、12年前に提言した『スポーツビジョン21』の実現が大きなテーマとなるこの時期だからこそ、スポーツ産業学会には、産業の活性化に貢献するプロジェクト研究や提言を更に期待したい。

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