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100号記念メッセージ

■vol.116 (2002年10月9日発行)

【杉山 茂】軽率すぎないか、テニス「カップ戦」の監督公募
【岡崎満義】進化する桑田真澄投手
【早瀬利之】高又順(38歳)、大会史上最高記録で日本女子オープン逆転初V


◇軽率すぎないか、テニス「カップ戦」の監督公募
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

伝統のデビスカップと女子フェドカップの監督が"公募"される。

日本テニス協会が、10月7日に明らかにしたもので、テニス界もそこまで来てしまったのか、の思いを深くする。

誰でも良い、という訳ではなく、これまでの両カップの代表経験者、文部科学省認定のコーチ・ライセンス取得者などと、さすがに規定を設けてはいるが、両カップの重みからすれば、この人事は日本協会が主導権を持って、きちっとした戦略のもとに決定すべきものだろう。軽率すぎはしないか。

関係者は"公募"の理由の1つを、コーチの仕事を魅力あるものにするため、としている。

これまで、多くの人たちにあまり歓迎されていなかったものと思える。日本のスポーツ界に、ある面、これは共通した欠陥だ。

"新生"などと謳い上げて発表した監督、コーチ陣も、1ヶ月程経つと、はや内外の批判のささやきに囲まれる。

それらの多くは、彼(彼女)らが選んだチーム(選手)編成に起因する。

監督、コーチに「戦う全権」が委ねられていないし、周囲の理解も乏しいのである。

嫌気がさした情熱家を、こうして1人、2人と失っていくシーンを、私は、これまで多くのスポーツで、幾度となく見てきた。

テニスもそうだった、とは云わないまでも、スタッフにつねに日本協会が万全の体制で支援してきたかとなると、怪しい。"公募"となれば、一層この面が充実されなければならない。

名乗り上げてくれた人の"戦う方針"を、総て受け容れるだけの備えと、それだけの覚悟がなければ、このような思い切った手段は、打ち出せないはずである。そうでなければ、単なる「あなたまかせ」の無責任方針だ。

2年前、日本バレーボール協会も、同じ手を使い、いささか冷やかし的な応募も含めて3人が手を挙げただけ。結局は、採用を見送った。在野の心ある指導者が"公募"という姿勢に、ノーをつきつけたとも云える。

テニスはどうか。"公募"を明らかにしたその日、釜山アジア大会で、男子団体が不利の予想をくつがえし優勝を飾った。28年ぶりのこと、と云う。

久々の光を、"公募"のオペレーションで更に大きな輝きにできるか、注目していきたい。

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◇進化する桑田真澄投手
(岡崎満義/ジャーナリスト)

9月18日に長嶋茂雄さんと瀧安治さん(元巨人コーチ)を交えて、1時間のトークショーをした。

その準備のため、長嶋さんのHPを覗いたついでに、桑田真澄投手の「LIFE IS ART」というHPを開いてみた。今年1月から月1回くらいの割合で、日記風に書いているものだが、これがすこぶる面白かった。

5月17日の項は、広島遠征に行った時、美術館に足を運んで「ポール・シャニック展」を見た感想を書いている。

芸術はすごいよ!毎日時間に追われっぱなしで、慌ただしいが、時間の許す限り、何かしらの芸術に触れていたいと思う。ピッチングも芸術だと思うし、まさしく、人生も芸術だな。『Life is art』そんな気持ちを込めて、このタイトルにしたんだ」と、HPタイトルの説明もしている。そして、ユニセフのために小学1年生の息子と一緒に描いた「平和」という魚の絵も載せている。

9月19日の項。前夜、桑田はホームランを打っている。

久しぶりのホームラン、嬉しかったよ。僕のバッティングの鍵は、キャッチボールにあるんだ。グラブにも、バットにも『芯』というものがあって、グラブの芯で捕球すれば、いい音が鳴るし、ボールの勢いをなくして送球し易くなる。だから、キャッチボールやゴロを捕るときも、常に芯で捕れるように集中して捕球練習しているんだ

打席に入ったときは、グラブをバットに持ち替えているだけなんだよ。ピッチャーが投げてくるボールをバットの芯で捕る。それだけなんだ。『捕れるボールは打てる!』だね

今シーズン、一度も打撃練習をしたことはないけど、何の不安もないよ。だって、いつもキャッチボールやゴロを捕っているから、その感覚で、来たボールをバットの芯で捕ればいいだけでしょ。『バットでキャッチボール』イメージが合う人は一度トライしてみて下さい

8月18日のHPは、何と「フェルマーの最終定理」という見出しだった。ピエール・ド・フェルマーは17世紀フランスの数学者で、数論の創始者。その「最終定理」は350年以上、誰も説明できなかったが、ついにイギリス人数学者アンドリュー・ワイルズが解いた、と彼は書いている。

そして、「数学の証明が終わり、定理が示されたら、それは何年たっても一切変わることがないと思う。野球の技術や理論も、数学と同じように変わることがないと信じていた。しかし、95年に右肘の手術をし、リハビリをしている時に、今までのような投げ方をすると、肘にすごく負担がかかり、痛かったので、少しずつ、今までの理論に疑問を持ち始めたんだ

『フェルマーの最終定理』に挑戦したワイズから勇気をもらい、自分の目標に向かって日々努力している。その『目標』とは、『どれだけ体がさばけるか』『どのようにして体を捌くか』だ

確かに、捻り、ため、うねりを使って、投げたり打ったりするのも、力を出す一つの方法なんだけど、他にも何か方法があるのではないかなと考えていた頃、武術と出会い、捻らない、タメない、うねらないで、力を出す方法をみつけたんだ。これまでの野球界の理論と真っ向から対立するものばかりだが、野球界の理論が物理的なら、体の使い方も研究する余地があると思うので、今までの経験を活かし、新しいものを生みだしたい。それが証明できれば、『投げられるのであれば、打てるし、捕れる』と定理できる。いいボールが投げられる人は、打てて当然、捕るのも上手いということ。打撃は良いが、守備が下手というのは成り立たないし、守備は良いけど、打てないというのも当てはまらないということだ。もしそうなら、体の使い方が出来ていないということになる

いかにも研究熱心で理論派・桑田投手の面目躍如たる言葉だ。「シンプルでエレガントで体に負担の少ない方法を研究している」。彼は続けて、「何百、何千の魚の群れが、一瞬にして同時に方向転換する光景、分かるかな?自分の体も、そのように使えるようになりたいと思う」というそのイメージは、まことに素晴らしい。

これまでいろいろな野球選手をインタビューしてきたが、面白くて明快な話が出来るのは、江川、落合、工藤、それに桑田投手だった。

HPを読むかぎり、彼はまだまだ進化しつづけているようだ。

【参考】読売ジャイアンツ公式ウェブサイト → http://giants.yomiuri.co.jp/

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◇高又順(38歳)、大会史上最高記録で日本女子オープン逆転初V
(早瀬利之/作家)

今年の日本女子オープンは、韓国斉州島出身のプロ、高又順(38歳)が14アンダーの大会史上最高スコアで逆転初優勝した。

しかも、最終日、風が吹く中で、ノーボギーの1イーグル(8番)、4バーディーという好スコアである。

一緒に回ったのが、まだプロ入りしたばかりのアリゾナ大のオチョア。初日8アンダーでトップに立ち、逃げ切り優勝かと思われた。この2人が優勝争いを演じたが、オチョアの方はまだキャリアが浅く、プレッシャーに潰れてしまった。

それにしても、高又順の逆転優勝はすごかった。勝因は、3日目の記者会見で語ったように「一番調子が良かった頃のスウィングをビデオで見て、やはり、力で打たなくてはいけないことを知ったら、距離が伸びた。ボールもスリクソンに替えて、15ヤード伸びたのがよかった」そうである。

プロゴルファーは自分のスウィングがよく見えない。崩れてしまって、球筋が荒れ、パットも入らない、という悪循環に陥る。そういう時は「一番調子が良かった頃のスウィングに戻ること」だと、高又順は教えてくれた。

高又順はアメリカツアーで戦う福嶋晃子と仲良しで、横浜の自宅も近い。また、アメリカツアーで戦う後輩の朴セリら韓国選手には「福嶋晃子と仲良くしてね」と、念を押すなど、おっかない顔だが、性格はやさしいプロである。

ところで、一部スポーツ紙は高又順の顔写真を小さく載せていた。偏見はなはだしい。何人であろうとも、もっと公平に取り上げてほしいと思った。

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