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vol.195(2004年4月7日発行)

【杉山 茂】06年ワールドカップも地上波で40試合
【佐藤次郎】「叫ぶ」のはもうやめよう
【岡崎満義】「公僕」長嶋茂雄さんの快癒を祈る


vol.194 2004年3月31日号「日本ハンドボールリーグ・・・」
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06年ワールドカップも地上波で40試合
(杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 2006年ドイツで開かれるワールドカップの国内テレビ放送権が動いた。

 民放とNHKで構成する「ジャパンコンソーシアム」(JC)が、日本での放送権販売の権利を受けている広告代理店・電通との間に契約の合意をみたのだ。電通は、4年前に2002年(日韓大会)と06年の2大会分を、当時はまだ元気だったスイスのエージェント「ISL」から得ていた。

 「ISL」は消滅してしまったが、放送権は電通の手中にあったのである。

 JC側は、正式な発表を行っていないが(=4月6日現在)、民放、NHKの地上波で合わせて40試合(=推定)、同BS(衛星)波で全64試合というのが合意内容のようだ。すでに一部のメディアも報じている。

 地上波40試合は、02年大会と同じで、お茶の間スタンドは、とりあえず安心できる数字が確保された、といってよい。

 放送権料は推測の域だが「140億円に近い130億円台」だろう。前回、JCの契約額は約70億円で、それから考えればほぼ倍増ということになる。

 それには理由がある。前回、全試合独占を打ち出し100億円を越す放送権料を支払ったスカイパーフェクTVが、今回は積極的な参戦の意思がなく、JCだけがターゲットだった。

 JCは競争相手がない状態で、しばらく様子を見るかと思えたが、意外にも早い段階での決着となった。NHKがハイビジョンの好ソフトとして高評価した背景が大きい、といわれる。地上波40試合は、前回なみに、民放・NHK折半だろうが、日本代表の予選突破がカギになるのは云うまでもない。

 予選リーグの日本戦の振り分けは前回と同じ民放2、NHK1で落ち着くだろうか。民放側のある関係者は3―0を目指すと笑い、NHKに近い筋は今回は2―1と力んだ。この“争い”は当分、お預けになる。

 さて、気になるのは、前回、あれほど張り切ったスカイパーフェクTVの姿勢だ。

 私は、昨年秋あたりから同局が06年には消極的、と聞いていたが、02年が失敗だったわけではない。もともと、ワールドカップを見るための料金は設定しない大盤ぶる舞いで、局としての知名度、イメージアップが目的の“事業”だった。

 会社(スカイパーフェクト・コミュニケーションズ)自体の経営が、安定を見通せるようになった現状で、巨額の支出をともなうワールドカップに乗り出す“冒険”を今回はあえてする必要もない、といったところだ。全試合録画での権利取得が目指す線か。

 同社周辺のある人は「350万人の加入者をどうしても400万、450万人にと考えるなら手を出すでしょうが、今は、そこまでの新規加入者の増加に焦っていない」と話す。

 アメリカ大リーグ、ヨーロッパのサッカーリーグへ経費を傾けるなど、この会社の狙いが定まってきたとも受け取れる。

 有料契約独占のコンテンツとしては、ワールドカップはかえって大きすぎる。

 それよりも、例えば「巨人戦以外のプロ野球…」といった加入の期待数を読める玄人(くろうと)やマニアを握るのが得策なのだ。日本における「ペイ・チャンネル」の難しさでもあろう。

 ところで、JCの金額。間もなく始まるといわれる10年冬季バンクーバー、12年夏季(開催都市は来年決定)のオリンピック放送権交渉に影響は避けられなさそうである―。

「叫ぶ」のはもうやめよう
(佐藤 次郎/スポーツライター)

 オリンピック・イヤーである。熱戦の始まったプロ野球からも、日本選手が次々と加わる米大リーグからも目が離せない。サッカーではワールドカップの予選が続いている。今後もテレビのスポーツ中継は花盛りということになりそうだ。
 
 そこで、中継にあたる各局の担当者たちに提案したい。
 
 「もう叫んでばかりいるのはやめにしませんか」
 
 このことである。
 
 もちろんこれはいまに始まったことではない。あらためてそう思ったのは、五輪代表選考のかかったマラソン中継を見ていた時だった。ふと気づいてみると、何かにつけてアナウンサーが声のトーンを一段上げて叫んでいるのである。たとえば、有力どころの一人と目されていた選手が大きく遅れて優勝争いの圏内を去った時にも、まだ可能性は消えていないと、ひときわ力を入れて叫ぶようにアナウンスしていた。どこからどう見ても、もう上位に入ることはあり得ないのに、だ。始終ハイトーンのアナウンスが当たり前のようになっているテレビの世界だが、あらためて気づいてみると、これはやはりおかしいと言わざるを得ない。
 
 マラソンは静かな中に張りつめた緊迫をはらんで続く競技である。淡々と抑えた調子の実況でこそ、その緊迫は表現される。絶叫調の実況では、それだけが浮いてしまう。せっかくのビッグレースなのに、それではかえってマイナスではないか。
 
 アナウンサーたちには、「番組を盛り上げなければならない」という強い義務感があるのだろう。そして、盛り上げるためには、終始叫んでいなければならない、高い調子を維持していなくてはいけないと思い込んでいるのだろう。そうなると、どうしてもしゃべる内容にもオーバーな表現が多くなる。いわゆる決まり文句を多用するようにもなる。これでは視聴者をひきつけるというわけにはいかない。聞いている方はしらけてしまいかねない。
 
 もちろん、絶叫調のアナウンスが聞いている者をぐいとひきつけることもある。ただし、それは冷静に中継してきた歴戦のアナウンサーが思わず叫んでしまうほどの状況であれば、ということだ。なんということもないシーンで叫ぶ必要などない。最初から最後まで叫びっぱなしでは、騒音としか聞こえないのである。
 
 スポーツ中継に限ったことではない。テレビには叫びが満ちている。みんなが「盛り上げるために」叫んでいる時代なのだ。となると、劇的なシーンが続くスポーツ中継が絶叫調になるのも無理はないかもしれない。しかし、大げさなフレーズをのべつまくなしに叫んでいて、スポーツの魅力や面白さがどこまで伝わるだろうか。
 
 もちろん、そうではない中継もある。冷静かつ詳細に、淡々と状況を説明していくアナウンスは、わかりやすいばかりか、画面の迫力も増しているように思える。見ている者の想像力を大いに刺激するからだ。
 
 「盛り上げる」というということを、もう一度よく考えてみる時期だと思う。大げさな表現や叫ぶようなアナウンスが、本当に「盛り上げる」役に立っているだろうか。スポーツの緊迫した勝負に、それがふさわしいだろうか。多くのスポーツファンはそれほど単純ではないはずだ。

「公僕」長嶋茂雄さんの快癒を祈る
(岡崎 満義/ジャーナリスト)

 長嶋茂雄さんが病気で倒れるなんて、想像したことがなかった。

 数年前、長嶋さんにインタビューしたあと、別れ際に「ONにはできるだけ長生きしてほしい。100歳を超えるほど生きてもらいたいのです。お2人に野球界のキンさんギンさんになってもらえたら、バブル崩壊があっても、年金が少々減っても、ONを見ながらみんな元気で生きていけますから」と言うと、「ONはキンさんギンさんですか…」とニコッと笑った。

 何ともいえないいい笑顔だった。

 私が取材で会った男性の中で、3大笑顔よしをあげれば、民俗学者で旅の達人・宮本常一さん、サントリーの佐治敬三さん、そして長嶋さんである。

 近年、長嶋さんはサインするとき、「野球というスポーツは、人生そのものだ」と書くことが多かった。私も1年ほど前にそんなサインを『ON記録の世界』という本の表紙裏にしてもらっている。

 長嶋さんのその言葉は、鬼面人を驚かすような箴言ではない。

 どちらかといえば、平々凡々たる人生訓である。

 しかし、たとえば次のような短歌―4月5日付朝日新聞朝刊の読者投稿歌壇に載ったスポーツ好きらしい人たちの短歌を読みながら、長嶋さんの人生訓を思い出すと、とたんにこの言葉が深みを帯びてくるような気がする。

 ・わが顔の眼鏡を取りてぬぐいつつ高見盛を視ておりつま老妻(つま)は(愛媛県今城保)

 ・なんべんか救われたような気がしおり人生の土俵にある徳俵(城陽市山中勉)

 ・余生とて消化試合とするなかれ己励まし「白鯨」を読む(土浦市内田亮三)

 深み、と言ったが、正確でないかもしれない。長嶋さんの言葉は、野球人として「心技体」を極めつくしたあとににじみ出てくる野球エッセンスのしたたり、というよりも、野球を見つづけるファンの心にやさしく寄り添った言葉だと思う。

 このような短歌をつくるスポーツ好きの生活人への共感のメッセージ、励ましの言葉のように思える。

 ONの一方の王貞治さんは、長嶋さんについて「打撃技術は自分の方が上だと思うが、ことファンにいかにアピールするかを考え抜いた人としては、くらべる人のない、空前絶後のプレイヤーだった」とかつて言ったことがある。

 私も長嶋茂雄は、いまや死語となった「公僕」、戦後最高の真の意味での「公僕」であると、書いたことがある。

 たとえば、王、落合、イチローが「私」を厳しく磨く内向きベクトル、求心力の人だとすれば、長嶋さんは「公」の人、外へ外へと広がろうとするベクトル、遠心力の人である。

 夏目漱石の「則天去私」のスポーツ的な現われ、と思うのである。稀有の人だ。

 一日も早い回復を心から願っている。



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