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vol.221(2004年10月13日発行)

【杉山 茂】“実力ある人気”がスポーツの支え  
【岡崎満義】イチローの言葉、イチローへの言葉
【佐藤次郎】もっと味わいたい「古き良き五輪」




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“実力ある人気”がスポーツの支え
杉山 茂/スポーツプロデューサー)

 いかに観客を集めるか。興行の永遠の課題であり、挑戦である。

 国内スポーツ界の競技会は、この意識が低いままで時が経ち、今夏以降の“プロ野球騒動”も底流には、この欠陥がのぞく。

 ノン・プロともなれば、スポーツを商品視する姿勢を、むしろ遠ざけて過し、最近になって、地域密着だの、日本リーグの自立運営だのと目覚めても、即席的に活況の術を手に入れられるものではない。

 しかも、サンプルとして供されるのがニューヨーク・ヤンキースやマンチェスター・ユナイテッドでは、呆然と空を見つめているに等しい。

 地道な競技力(商品力?)の向上と相まって経営感覚を高める体制がリーグやチーム(クラブ)で認識されない限り、日本には本格的なスポーツマネージメントは期待できない。

 人気、というのは突然はじける。先週、東京有明コロシアムでのジャパン・オープンテニスは、マリア・シャラポア(ロシア)1人のパワーで、集客が難しいとされる会場を賑わせた。大会史上初の数字(約55,000人)という。

 抜群のビジュアル度、ともすればその評判だけが先行する日本の“スポーツ観”は、そこの浅さを示すが、プロ転向3年目、17歳の彼女は、モデルをこなすルックスのうえ、今年のウィンブルドン勝者の実力となれば、観客が詰めかけないほうがおかしい。

 問題は、この盛況をスポーツの楽しさ、テニスのリピーターへ誘う手が、どこまで採られていたか、だ。シャラポワさえ来れば、と安直なマネージメントでは、すぐに限りがくる。これまでにも数え切れないほどのマイナスの例がある。

 同じ頃、札幌で行われた「秋季全道高校野球」の決勝戦が16000人もの足を誘っている。

 北海道に初の甲子園優勝をもたらせた夏のヒーロー・駒大苫小牧高校が、主力メンバーを一新したとは言え、その快挙に酔う熱気が衰えず、相手が札幌の公立校という話題も重なって、この時期の「高校野球」では異例の集客になった。

 確かな実力のスポーツをいかに見せるか。施設の工夫や、ファミリーを迎える雰囲気づくりなど、課題の答えは、極めて“基本的”だ。

 安手なショーアップがマネージメントだなどと勘違いすると、せっかくのスポーツをかえって寒々としてしまうー。

イチローの言葉、イチローへの言葉
岡崎 満義/ジャーナリスト)

 イチローが262本のヒットを打って、メジャー年間最多安打の新記録を作った。日本プロ野球70年の年、長嶋茂雄さんが倒れ、選手会が初めてストをした年の世界的快挙として、長く記憶されるだろう。

 華やかなホームラン王・ベーブ・ルースの陰にかくれて、日本人には名前すら知られていなかった安打王・ジョージ・シスラーにイチローがその記録を破ることで光を当てたことがうれしかった。生きている人間の中で、死者が目覚めるのは、何という快感であろう。

 イチローのコメントはいつでも面白いが、今回の共同記者会見の中でもっとも印象に残った言葉は、次の目標は4割打者か、と訊かれたときー

 「打率はコントロールできるでしょう。それを目標にしていて可能性が出てくると、打席に立たないこともできるから。でも、ぼくの原点にあるのは野球が好きでグラウンドに立ちたいということ。それ(打席に立たないこと)は本意ではないので、なかなか4割に目標を置くことはできない」

 イチローは単なる記録の人、数字狙いの人ではないことがよく分かる。昔、日本のプロ野球では、首位打者をとるために、打率を下げないようにシーズン最後の数試合を休んだりすることがままあった。お目当ての看板役者抜きの舞台を、見せるようなものだ。

 10数年前、東京6大学リーグで、早稲田の選手が首位打者になった。5割を越す歴代最高打率を維持するために、こともあろうに早慶戦に出なかった。あきれてものも言えなかった。早大に入ったのは、神宮球場で歴史ある早慶戦に出るためではなかったのか、それが君の野球の“初心”ではなかったのか、と、そのとき監督と当の選手を軽蔑したくなったものだ。

 イチローは開幕前、ヒットもいいが、四球をもっと選べ、と批判されたことがあった。「四球では、見ている人も、やっている方もつまらない。何としてでも勝つというアマならいいが、プロだから。どれだけ自分が楽しみ、周りも楽しませるかだ」と言うのが、イチローの答えだったと、読売新聞のコラムが伝えている。イチローのコメントには、いつも何か考えさせられるものがある。

 イチローへの言葉では、ニューヨーク・タイムズが「グラウンドをキャンバスにかえたアーチスト」と評価したこと、シアトル・タイムズ紙(ボブ・フィニガン記者)が「パワーをつけようと多くの選手がカネを注ぎ、そちらの方に意識を集中させる中、イチローがしているプレーは純粋なベースボールといえるだろう。イチローはベースボール純粋者だといいたい」という評価が印象に残った。

 しかし、たくさんの賛辞の中で、私がもっとも感動したのは、日刊スポーツ紙に載った短いコメント―元レッドソックス外野手の85歳。テッド・ウィリアムスとチームメイトで、イチローもボストンであいさつに行っているジョニー・ぺスキーさんの言葉である。

 「イチローのことは気になって、テレビで毎日、毎回、欠かさず見ている。彼のプレーを見ていると『自分は生きているんだな』と感じるんだ。初めて会った時は17歳の少年かと思った。今は老かいなバッティングにくぎ付け、ぼくのアイドルだ」

 その言やよし!イチローのプレーを見ていると「自分は生きているんだな」と感じるとは、何という素晴らしい人生賛歌であろう。それこそがプロの仕事というものだ。イチローは野球選手冥利につきる、と思うはずだ。そして、こんなに感受性豊かな85歳がありうることに、私は感動する。

もっと味わいたい「古き良き五輪」
佐藤 次郎/スポーツライター)
 「古き良きオリンピック」という言葉がしきりに頭に浮かんだ。その写真展を見て回っている間、ずっとそのことが心を離れなかった。
 
  東京・恵比寿の東京都写真美術館でこの17日まで開かれているのは「東京オリンピック40年記念報道写真展」である。岸本健氏を中心として、長年にわたって夏冬のオリンピックを記録、報道し続けている写真集団「フォート・キシモト」の労作が、メダルや記念品などとともに展示されている。ひとつひとつをじっくりと眺めていると、あのオリンピックの光景をもっともっと見たいという気持ちが強く湧いてきた。いまのオリンピック、いまのスポーツ界、さらにいまの社会そのものが失ったものが、写真や記念品、当時の文書からしきりと立ち上ってくるように思えたからだ。
 
  競技の様子。選手村の光景。くつろぐ選手。熱い視線を送る観客たち。オリンピックを前にした大会前の街の風景。選手や役員が着た公式ブレザーやユニフォーム。大会ポスターの数々−−。それぞれに、こちらの心にすっと入り込んでくるものがあった。当時を知る者としての懐かしさもあるが、それだけではない。回を追うごとに豪華さときらびやかさ、巨大さを増してきた五輪を見守ってきた者の目には、40年前の写真から伝わってくる素朴さ、どちらかといえば質素な中にもはっきりと感じられる純な熱気が、いかにも好ましい、あるべきスポーツの姿として映ったのである。
 
 もちろん素朴で質素であればいいというわけではない。ここまで規模が広がり、巨額な資金を生むようになったからこそ、オリンピックの素晴らしさが世界中に知られるようになったのは間違いない。ただ、そのために失ったものがあまりにも多いのは、先だってのアテネでも見せつけられたばかりだ。巨大なきらびやかさと引き替えに、肝心のスポーツの心が失われてしまってはなんにもならない。おそらく東京大会当時にも、いまの五輪が抱えるさまざまな問題が既に生まれていたのだろうが、それでも、まだオリンピック本来の姿が生き生きと息づいていたことは、会場の数々の写真が教えてくれている。
 
 ことに印象的だったのは内外のトップアスリートたちの表情だった。競技を終えて選手村で交歓する彼ら、彼女らの笑顔は、まさに「普通の人々」のそれだった。一般の世界とはかけ離れたところにいる「特別な」人々や、巨額の金やショービジネスや視聴率やクスリやらではなく、普通の人間そのものが主役であった時代の、なんともいえずに心地よい空気が、それらの古びた写真からは伝わってきていた。
 
 フォート・キシモトや主催者の皆さんには、ぜひ再度、再々度の写真展を望みたい。そして自分もまた、あの古き良きオリンピックのことをあらためて取材し、記録してみたいと思っている。小さなものであっても、それらは、オリンピック本来の姿や魅力を思い出すためのひとつの灯になると思うのだ。
 


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